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煉獄都市 第5章 奈落での邂逅(2)
「驚いた?フフフ・・・そう、あなたのお友達、静音ちゃんよ。この娘も私たちの捕虜になったの・・・」
クリスが言い、ロープを手繰って、静音の身体を乱暴に手元へと引き寄せる。
「こっちのお嬢ちゃんはワシが捕まえたんじゃ」
自慢げに鼻を鳴らしながら、奥の部屋からアゲットが再び現れ、元通りにドアを閉めた。
「この娘が『サンクチュアリ』の裏口から侵入しようとしたところを、すかさず近くにあったスタンシステムで失神させたんじゃよ。この娘は物騒な銃を持っとったし、年寄りにはいささか過ぎたバイオレンスじゃったが、人手不足なんで仕方がないわい。・・・ここは実質的に、ワシとクリスの二人だけで運営しとる組織じゃからなぁ・・・」
静音も恵麻里同様、着ていたものを全てむしり取られた上に、両手を後ろに束ねられ、バンドで拘束されていた。
しかも口元には樹脂製らしい黒色の円柱が横ぐわえにさせられ、その両端から伸びる革紐が後頭部でガッチリと括られている。この轡状の器具が、静音から自由な発声までをも奪っていたのだ。
「うゥゥむぅう・・・・」
哀しげな呻き声と共に、透明な涎が口元から溢れ出して顎を伝った。
表情は激しい恐怖と羞恥のためにこわばり、乾いた涙の痕が眼鏡のレンズを所々白く汚している。気弱で物静かなこの少女が、つい最前まで、身体と心を(恐らくはクリスによって)手ひどくなぶり苛まれていたことは明らかだった。
「静音ッ!・・・」
思わず歩み寄ろうとした恵麻里を、クリスが開いた掌を振って押し止める。
「それ以上近寄っちゃダメよ!捕まった獲物同士に、気楽に口を利く自由なんかあるわけがないでしょう?ほら、近寄ればこの娘の息が詰まるわよ・・・」
クリスは静音を後ろから抱き回し、首輪に繋がれたロープをグイと引き絞った。
「うくゥうーッ!・・・」
首を吊られるような格好になった静音が、喉の奥からこもった悲鳴を絞り出す。
「や、やめて!その娘にひどい事しないでッ!」
叫ぶ恵麻里に、クリスはゾッとするほど酷薄な笑みを向け、
「それはあなたの、これからの態度次第よ。身の程をわきまえて素直に私たちに協力するというのなら、これ以上この娘には何もしないわ。でもそうでないなら、何の保証も出来ないわね・・・」
クリスの左手が、はち切れんばかりに豊かな静音の裸身をいやらしくまさぐり始めた。
素晴らしいボリュームで、しかし型くずれなく前を向いているバストをピシャリと叩くようにして揺らし、掌にあふれる量感を確かめながら、頂点へ向かって柔々と絞り上げる。次いでその指先は、品良く丸みを帯びた下腹部へと滑り降り、淫靡に蠢きながら、薄く頼りなげな下生えを左右にかき分けてゆく・・・。
「うくッ!・・・」
静音が小さく呻き、裸身をギクッとこわばらせる。
チュッ・・・ピチュッ・・・・。
淫らな音が響き、クリスの指先はたちまち透明な粘液にまみれ、輝き始めた。
「むッ・・ふあッ!・・・」
静音は必死に身体をよじり、太股を出来るだけ固く閉じ合わせようとするのだが、秘裂をなぞるように這い込んでくる魔女の白い指をかわすことは不可能だった。
口を塞がれているために許しを乞う声すら上げられず、鼻腔から洩れる哀しげな息も、次第に絶望のこもった弱々しいすすり泣きに変わっていく・・・。
「この娘にも恵麻里ちゃんと同様、ゾニアンの素晴らしい効果を『お試し』させてあげたのよ。だからほら、まだバージンのくせにすっかり身体がエッチになっちゃってるでしょう?・・・今やこの娘も、大事なところをちょっと弄られただけで、浅ましくよがり狂っちゃう牝犬に過ぎないってワケ。・・・ねェ、そうでしょう、静音ちゃん?・・・」
静音の肩越しに首を突き出して意地悪くささやきながら、クリスはこじ開けた媚肉の奥をまさぐるように指先を蠢かした。
「さあ、とびきりの顔をして気をやるところを、恵麻里ちゃんに見てもらいなさい・・・」
「くンうゥゥーッ!・・・」
瞬間、目を見開き、静音ははじかれたように白い裸身を仰け反らせた!
肌一面に浮いていた汗がパッと宙にしぶく。熱く膨れ上がり、固く縦長に尖った乳房が、ヒクヒクと痙攣しながら天井を指した。
「ふくゥ・・・・うッ、うッ、うッ、うッ・・・・」
クリスの指戯によって他愛もなく絶頂へと導かれてしまったらしい静音は、やがて華奢な首をガックリと前に折り、全身を羞恥に震わせながら嗚咽し始めた。
新たな涙が大量にあふれ出て頬を伝い、口元の涎と混じり合って、顎の先からポタポタとこぼれ落ちる。
滑らかな体液が二筋、三筋と粘く跡を付けている内股を、少しでも人目から覆い隠したいのか、ぎこちなく腿をすり合わせようとする様が何とも哀れであった。
(ああ、静音!・・・・)
パートナーの無惨な様子に、恵麻里は思わず唇を噛んで目を伏せた。そして、静音が恵麻里を見捨てて逃げ出したのではないかと、たとえ一瞬でも疑ったことを後悔した。
逃げ出すどころか、静音はやはり、律儀に自分の任務を果たそうとしていたのである。しかし抜け目のない「新世界準備会」の魔の手に、彼女もまた捕らわれていたのだ!
・・・そう、恵麻里の正体と目的が彼らに筒抜けだった以上、相棒の静音のこともまた、敵に知られているのは当たり前であった。そして彼らが、静音の動きに備えて、抜かりなく罠を用意していることも・・・。
(・・・当然気が付くべきだったのに・・・。許して、静音・・・私が迂闊だったばっかりに・・・)
自らの余りの間抜けさ、不甲斐なさに、恵麻里の心に張り裂けそうな自責の念が渦を巻いた。
「さあ、どうするの恵麻里ちゃん?私たちの仕事に手を貸す?」
クリスが、静音の身体に腕を巻き付けたまま言った。
「言っておくけど、この娘にはまだ軽~くゾニアンを味わってもらっただけよ。・・・本当はこの後でじっくりと処女を破いてやって、あなた同様にバイオチップを移植する予定だったの。その後で、あなた達二人を変わり果てた姿同士でご対面させるあげるつもりだったのよ」
キラ、とクリスの瞳が残忍な光を放ち、
「でも予定は変更よ。あなたがあくまで私たちに逆らうというのなら、今すぐにこの娘の処女を奪い、バイオチップを植え付けてやるわ。今ここで、あなたの見ている目の前でねッ!」
「やッ、やめて!いくら何でもそんなッ・・・」
「フフフフ、そうよね、そんな可哀想な場面、見るに忍びないわよねェ。・・・だったら言うことを聞きなさい!ケチなプライドを捨てて、私たちに手を貸すのよッ!!」
叩きつけるようなクリスの宣告を、恵麻里は悄然とうなだれて聞いた。
・・・これ以上の抵抗は、とても叶いそうになかった。自分一人だけならばともかく、静音までが地獄に堕ちる様を見せつけられては・・・・。
「わ、分かったわ・・・・」
意を決してそう言いかけた時、すすり泣いていた静音が不意に顔を上げ、恵麻里を見つめた。
一杯に涙を溜めた目には、何か決然とした光が宿っている。彼女は上気しきった顔を小さく左右に振った。
(し、静音、あなた!・・・)
ハッとなって、恵麻里は相棒の顔を見返した。静音の悲壮な決意が、その一瞬にハッキリと伝わってきたからだ。
「ひゃあ、こりゃ驚いた!」
二人の表情をめざとく見て取り、アゲットが頓狂な声を上げてみせた。
「そっちの眼鏡のお嬢ちゃんも、何をされようと辛抱をし通すつもりだぞ。・・・二人そろって、実に見上げた根性じゃなぁ・・・」
・・・そう、静音は、恵麻里が敵の言いなりになることをあくまで押し止めようとしたのだ。そのために、たとえ自らの肉体に惨たらしい呵責が加えられるとしても・・・。
二年間、助手として救出業務に携わってきたことで、彼女の中にもS・Tとしての強い自負と意地が芽生えていたらしい。
(静音・・・・)
か弱かった親友の思わぬ成長ぶりに再び勇気づけられながらも、同時に恵麻里の心中には、これまで以上の強い迷いが生じていた。
(・・・静音がそこまで覚悟を決めているのなら、その思いに応えて、クリスの要求をはねつけてやりたい!・・・でも、そのために彼女が目の前で陵辱されるなんて・・・・)
・・・恵麻里のその煩悶に決着を付けるかのように、ヒステリックなクリスの怒声が響き渡った。
「見上げた根性?信頼で固く結ばれた二人ってわけ?ハン、笑わせんじゃないよ!」
クリスの目は吊り上がり、口元は苛立ちに醜く歪んでいる。
屈服させたつもりの二人の捕虜が、実はまだまだ観念していないことが分かり、彼女は完全にキレてしまったらしい。野獣がついにその邪(よこしま)な本性をむき出したかのように、口調までが蓮っ葉に変わってしまっていた。
「よぉーく分かったよ。お前たちのように身の程知らずのクソ虫には、本当の絶望ってヤツを見せつけてやらなきゃならないってことがね!!・・・・」
クリスが言い、ロープを手繰って、静音の身体を乱暴に手元へと引き寄せる。
「こっちのお嬢ちゃんはワシが捕まえたんじゃ」
自慢げに鼻を鳴らしながら、奥の部屋からアゲットが再び現れ、元通りにドアを閉めた。
「この娘が『サンクチュアリ』の裏口から侵入しようとしたところを、すかさず近くにあったスタンシステムで失神させたんじゃよ。この娘は物騒な銃を持っとったし、年寄りにはいささか過ぎたバイオレンスじゃったが、人手不足なんで仕方がないわい。・・・ここは実質的に、ワシとクリスの二人だけで運営しとる組織じゃからなぁ・・・」
静音も恵麻里同様、着ていたものを全てむしり取られた上に、両手を後ろに束ねられ、バンドで拘束されていた。
しかも口元には樹脂製らしい黒色の円柱が横ぐわえにさせられ、その両端から伸びる革紐が後頭部でガッチリと括られている。この轡状の器具が、静音から自由な発声までをも奪っていたのだ。
「うゥゥむぅう・・・・」
哀しげな呻き声と共に、透明な涎が口元から溢れ出して顎を伝った。
表情は激しい恐怖と羞恥のためにこわばり、乾いた涙の痕が眼鏡のレンズを所々白く汚している。気弱で物静かなこの少女が、つい最前まで、身体と心を(恐らくはクリスによって)手ひどくなぶり苛まれていたことは明らかだった。
「静音ッ!・・・」
思わず歩み寄ろうとした恵麻里を、クリスが開いた掌を振って押し止める。
「それ以上近寄っちゃダメよ!捕まった獲物同士に、気楽に口を利く自由なんかあるわけがないでしょう?ほら、近寄ればこの娘の息が詰まるわよ・・・」
クリスは静音を後ろから抱き回し、首輪に繋がれたロープをグイと引き絞った。
「うくゥうーッ!・・・」
首を吊られるような格好になった静音が、喉の奥からこもった悲鳴を絞り出す。
「や、やめて!その娘にひどい事しないでッ!」
叫ぶ恵麻里に、クリスはゾッとするほど酷薄な笑みを向け、
「それはあなたの、これからの態度次第よ。身の程をわきまえて素直に私たちに協力するというのなら、これ以上この娘には何もしないわ。でもそうでないなら、何の保証も出来ないわね・・・」
クリスの左手が、はち切れんばかりに豊かな静音の裸身をいやらしくまさぐり始めた。
素晴らしいボリュームで、しかし型くずれなく前を向いているバストをピシャリと叩くようにして揺らし、掌にあふれる量感を確かめながら、頂点へ向かって柔々と絞り上げる。次いでその指先は、品良く丸みを帯びた下腹部へと滑り降り、淫靡に蠢きながら、薄く頼りなげな下生えを左右にかき分けてゆく・・・。
「うくッ!・・・」
静音が小さく呻き、裸身をギクッとこわばらせる。
チュッ・・・ピチュッ・・・・。
淫らな音が響き、クリスの指先はたちまち透明な粘液にまみれ、輝き始めた。
「むッ・・ふあッ!・・・」
静音は必死に身体をよじり、太股を出来るだけ固く閉じ合わせようとするのだが、秘裂をなぞるように這い込んでくる魔女の白い指をかわすことは不可能だった。
口を塞がれているために許しを乞う声すら上げられず、鼻腔から洩れる哀しげな息も、次第に絶望のこもった弱々しいすすり泣きに変わっていく・・・。
「この娘にも恵麻里ちゃんと同様、ゾニアンの素晴らしい効果を『お試し』させてあげたのよ。だからほら、まだバージンのくせにすっかり身体がエッチになっちゃってるでしょう?・・・今やこの娘も、大事なところをちょっと弄られただけで、浅ましくよがり狂っちゃう牝犬に過ぎないってワケ。・・・ねェ、そうでしょう、静音ちゃん?・・・」
静音の肩越しに首を突き出して意地悪くささやきながら、クリスはこじ開けた媚肉の奥をまさぐるように指先を蠢かした。
「さあ、とびきりの顔をして気をやるところを、恵麻里ちゃんに見てもらいなさい・・・」
「くンうゥゥーッ!・・・」
瞬間、目を見開き、静音ははじかれたように白い裸身を仰け反らせた!
肌一面に浮いていた汗がパッと宙にしぶく。熱く膨れ上がり、固く縦長に尖った乳房が、ヒクヒクと痙攣しながら天井を指した。
「ふくゥ・・・・うッ、うッ、うッ、うッ・・・・」
クリスの指戯によって他愛もなく絶頂へと導かれてしまったらしい静音は、やがて華奢な首をガックリと前に折り、全身を羞恥に震わせながら嗚咽し始めた。
新たな涙が大量にあふれ出て頬を伝い、口元の涎と混じり合って、顎の先からポタポタとこぼれ落ちる。
滑らかな体液が二筋、三筋と粘く跡を付けている内股を、少しでも人目から覆い隠したいのか、ぎこちなく腿をすり合わせようとする様が何とも哀れであった。
(ああ、静音!・・・・)
パートナーの無惨な様子に、恵麻里は思わず唇を噛んで目を伏せた。そして、静音が恵麻里を見捨てて逃げ出したのではないかと、たとえ一瞬でも疑ったことを後悔した。
逃げ出すどころか、静音はやはり、律儀に自分の任務を果たそうとしていたのである。しかし抜け目のない「新世界準備会」の魔の手に、彼女もまた捕らわれていたのだ!
・・・そう、恵麻里の正体と目的が彼らに筒抜けだった以上、相棒の静音のこともまた、敵に知られているのは当たり前であった。そして彼らが、静音の動きに備えて、抜かりなく罠を用意していることも・・・。
(・・・当然気が付くべきだったのに・・・。許して、静音・・・私が迂闊だったばっかりに・・・)
自らの余りの間抜けさ、不甲斐なさに、恵麻里の心に張り裂けそうな自責の念が渦を巻いた。
「さあ、どうするの恵麻里ちゃん?私たちの仕事に手を貸す?」
クリスが、静音の身体に腕を巻き付けたまま言った。
「言っておくけど、この娘にはまだ軽~くゾニアンを味わってもらっただけよ。・・・本当はこの後でじっくりと処女を破いてやって、あなた同様にバイオチップを移植する予定だったの。その後で、あなた達二人を変わり果てた姿同士でご対面させるあげるつもりだったのよ」
キラ、とクリスの瞳が残忍な光を放ち、
「でも予定は変更よ。あなたがあくまで私たちに逆らうというのなら、今すぐにこの娘の処女を奪い、バイオチップを植え付けてやるわ。今ここで、あなたの見ている目の前でねッ!」
「やッ、やめて!いくら何でもそんなッ・・・」
「フフフフ、そうよね、そんな可哀想な場面、見るに忍びないわよねェ。・・・だったら言うことを聞きなさい!ケチなプライドを捨てて、私たちに手を貸すのよッ!!」
叩きつけるようなクリスの宣告を、恵麻里は悄然とうなだれて聞いた。
・・・これ以上の抵抗は、とても叶いそうになかった。自分一人だけならばともかく、静音までが地獄に堕ちる様を見せつけられては・・・・。
「わ、分かったわ・・・・」
意を決してそう言いかけた時、すすり泣いていた静音が不意に顔を上げ、恵麻里を見つめた。
一杯に涙を溜めた目には、何か決然とした光が宿っている。彼女は上気しきった顔を小さく左右に振った。
(し、静音、あなた!・・・)
ハッとなって、恵麻里は相棒の顔を見返した。静音の悲壮な決意が、その一瞬にハッキリと伝わってきたからだ。
「ひゃあ、こりゃ驚いた!」
二人の表情をめざとく見て取り、アゲットが頓狂な声を上げてみせた。
「そっちの眼鏡のお嬢ちゃんも、何をされようと辛抱をし通すつもりだぞ。・・・二人そろって、実に見上げた根性じゃなぁ・・・」
・・・そう、静音は、恵麻里が敵の言いなりになることをあくまで押し止めようとしたのだ。そのために、たとえ自らの肉体に惨たらしい呵責が加えられるとしても・・・。
二年間、助手として救出業務に携わってきたことで、彼女の中にもS・Tとしての強い自負と意地が芽生えていたらしい。
(静音・・・・)
か弱かった親友の思わぬ成長ぶりに再び勇気づけられながらも、同時に恵麻里の心中には、これまで以上の強い迷いが生じていた。
(・・・静音がそこまで覚悟を決めているのなら、その思いに応えて、クリスの要求をはねつけてやりたい!・・・でも、そのために彼女が目の前で陵辱されるなんて・・・・)
・・・恵麻里のその煩悶に決着を付けるかのように、ヒステリックなクリスの怒声が響き渡った。
「見上げた根性?信頼で固く結ばれた二人ってわけ?ハン、笑わせんじゃないよ!」
クリスの目は吊り上がり、口元は苛立ちに醜く歪んでいる。
屈服させたつもりの二人の捕虜が、実はまだまだ観念していないことが分かり、彼女は完全にキレてしまったらしい。野獣がついにその邪(よこしま)な本性をむき出したかのように、口調までが蓮っ葉に変わってしまっていた。
「よぉーく分かったよ。お前たちのように身の程知らずのクソ虫には、本当の絶望ってヤツを見せつけてやらなきゃならないってことがね!!・・・・」
煉獄都市 第5章 奈落での邂逅(3)
「入りなッ!・・・」
クリスは手綱を引き絞ると、苦しげに喘ぐ静音を、彼女の元いた奥の部屋へ乱暴に押し込んだ。
「し、静音ッ!・・・」
思わず後を追おうとする恵麻里を、クリスは素早く身をひるがえして抱き留め、
「あわてるんじゃないわよ。心配しなくても、お前にもタップリと見せてやる。あの娘がどうなるのかをね。さあッ!・・・」
「あッ!・・・」
背中を突き飛ばされ、恵麻里は中腰のまま、のめるように奥の室内へと足を踏み込む。
・・・そこは六畳分くらいの、インテリアも何も無い、ごく小さな部屋だった。
照明も灯されておらず、天井近くにある明かり取りから弱々しく日が射し込んでいるだけで、室内はひどく薄暗い。
恵麻里の目の前・・・部屋のほぼ中央には静音がうつ伏せに倒れていたが、目を凝らすと、その前方にさらにもう一人、床に横たわっている人影が見える。
「?・・・・」
人影の正体が分からず、恵麻里が前進をためらっていると、続いて室内に入ってきたクリスがパチンと明かりを付けた。
「あッ!・・・」
思わず目を見開き、驚愕の叫びを洩らす。室内灯に照らし出された人物を、恵麻里は知っていたからだ。
(あの娘だわ!確か、遠山深雪ちゃん!・・・・)
・・・そう、それは、恵麻里がこの「サンクチュアリ」を訪れたそもそもの目的・・・つい数時間前に立体映像で見た、あのさらわれた女子高生だったのだ!
「フン、知ってるわよ。お前たちはこの娘を救い出すためにここへやって来たのよねェ?・・・だけど獲物(ゲーム)同士として巡り会うなんて皮肉なこと・・・」
つかつかと部屋の奥へ進みながら、クリスが嘲るように言った。
「可哀想だけど、この深雪という娘はもう二度と父親の元へ帰ることはないわ。さあ、起きなッ!」
床に伏せている少女を、荒々しく髪をつかんで引き起こす。クリスは完全に理性の歯止めを失っていた。
「うァ・・・・」
弱々しく喘ぎ、上体を持ち上げた少女は、恵麻里たち同様に全裸に剥かれ、両手を後ろに縛られている。
口元には静音の物と同じ型の轡がはめられ、溢れ出た涎や、そして涙の痕が、黒い染みとなって顔のあちこちを隈取っていた。
この組織に囚われてから約一日、散々に身体と精神をなぶり抜かれていたのだろう。オドオドとクリスを見上げる瞳には、屠殺寸前の家畜さながら、強い怯えと絶望しきったような色が浮かんでいる。
「この娘はね、私たちの業界用語で言えば、『砕けちまう』一歩手前にまで追い込んであるのさ。ホラ、見てごらん」
クリスが言い、少女の身体を仰向けにすると、閉じ合わせていた両脚を乱暴にかき広げた。
「!・・・・」
思わず恵麻里が息を呑む。
少女の内股は、自らが流した淫らな汗によってベトベトに汚れていた。
むき出しにされ、大きく反り返って、内側の襞模様をあからさまに見せている媚肉の縁。怒張しきってフードを押しのけ、ツヤツヤと血の色に光りながら屹立しているクリット。収縮を繰り返し、間断なく新たな涎を噴きこぼしている膣口・・・・。それらの構造全体が、まるで獲物を誘い込む食虫植物のようにヒクヒクと大きく蠢いている。
溢れ出た愛液は驚くほど多量で、床の上にも所々粘い溜まりが出来ていた。
「フフフ、無様だろう?膣にバイオチップを植え付けた上に、ゾニアンを限界スレスレにまで投与してあるのさ。つい昨日まではスカした名門校に通う箱入り娘だったかもしれないけれど、今じゃ汚い汁を垂れ流しの淫売嬢ってワケ。しかも・・・」
恵麻里に向かって言いながら、クリスはスーツのポケットからゾニアンの注入器を取り出した。
「この上さらにゾニアンを投与してやればどうなるか、そこでじっくり見物するといいわ!」
「うくゥーッ!ムーッ!・・・」
少女が轡の奥でくぐもった悲鳴を上げ、クリスの腕から逃れようと必死に身をもがき始めた。
涙の溜まった両目が、極限の恐怖のため一杯に見開かれている。その忌まわしい薬をこれ以上打ち込まれたらどうなるのか、彼女は本能的に悟っているようであった。
「おいおいクリス、短気はつまらんぞ。その娘は高く売れる。砕いちまってはブチ壊しじゃ!」
ドアの隙間から顔を突き出し、やれやれという調子でなだめにかかったアゲットに、クリスは怒気鋭い目を向け、
「あんたは引っ込んでなよアゲット!今度こそ、この強情な小娘どもに思い知らせてやるんだ。どんなに血の巡りが悪い身の程知らずでも、これを見れば一発で気が変わるだろうからね。さあ、いくよッ!」
言うが早いか、クリスは注入器を少女の右の乳房の上に押し当て、グイと力を込める。
「んッグゥゥゥゥゥーッ!・・・・」
恵麻里たちが思わずビクリと背をすくませたほど、まるで獣さながらの唸り声を轡の奥で上げ、少女は汗に濡れた裸身を強く弓なりにした。
「ああっ、ホントにやっちまった!・・・」
アゲットが叫ぶように言い、思わず室内に身を乗り出す。
硬直したまま瘧(おこり)のようにブルブルと痙攣していた少女の裸身は、数秒もすると急速に弛緩を始め、やがてクリスの腕の中でダラリと伸びきった。
「うァ・・ァアあ・・・」
くぐもった呻き声が洩れ、見開いた目の端から涙がこぼれ落ちる。その瞳は一瞬の間に、まるで霞がかかったかのように輝きを無くしていた。
「一丁上がり・・・」
声もなく見つめる恵麻里に向かってクリスが酷薄な調子で言い、少女の身体を縛めている拘束具を外し始めた。
ジットリと湿った手枷、足枷、そして棒状の轡が次々と取り外され、床の上に置かれたが、少女は自由になったはずの身体をピクリとももがこうとしない。まるで壊れたマリオネットのように、目を虚ろに開いたままクリスのなすがままになっていた。
「これが許容量を超えたゾニアンを注入された者の末路・・・つまり『砕けちまった』状態さ・・・」
クリスが少女の短髪を撫でつけながら言った。
「聞いたことがあるだろう?ゾニアンには、いっぺんに多量を投与すれば脳障害を起こす作用があるんだよ。・・・この娘のおつむはこれで一生クルクルパーさ。どんな治療を施してももう治らない。セックスのことしか考えないし考えられない、獣以下の卑しい生き物になったのさ!」
「そ、そんな・・・まさか・・・・」
あまりの事態に声を震わせる恵麻里に、少女はぼんやりと焦点の定まらない視線を向けた。その表情からは、クリスの言葉通り、人間らしい知性の色がすっぽりと欠落している。
「うふァ・・・・」
口元に薄笑いが浮かび、同時に驚くほど大量のよだれが溢れ出して、顎から胸元をベトベトに汚してゆく。少女は完全に痴呆状態になっていた。
「これほどの美形を砕いちまうのはもったいなかったけれど、この際仕方がないわ。こういう商品が『お好み』だという変わった客もいるから、まあ売れないこともないでしょう。・・・さて・・・・」
クリスは少女を床に寝かせると、すぐ側にうずくまっている静音を振り返る。
「!・・・・」
静音はクリスの視線にハッと身をすくませ、あわてて部屋の隅へと後ずさろうとしたが、たちまち首輪に繋がれた紐で手繰り寄せられ、背後から抱え込まれてしまった。
「今度はお前の番だね。覚悟はいいかい?ええ、静音ちゃん?・・・」
押し殺したような声音で言い、クリスは右手に持ったゾニアンの注入器をヒラヒラと振って見せた。
注入器にはすでに新たなアンプルが差し込まれ、注入量の調節ダイアルが最大の位置に回されている。
「むッ、むァァァァーッ!・・・・」
静音が轡の奥で激しい悲鳴を上げ、狂ったようにその裸身をもがき始めた。
何とかクリスの腕の中から逃れようとするのだが、縛められ、薬に冒された無力な身体ではどうにもならない。逆にガッチリと抱きすくめられ、首筋に注入器を押し当てられてしまった。
「ジタバタするんじゃないよ!さっきまでの勇ましさはどうしたんだい?何をされようが耐え抜く覚悟だったんだろう?その意地を通して『砕け散る』んなら本望じゃないか」
「むァッ、むふァーッ!・・・」
クリスの揶揄に、静音の絶叫が一段と激しくなる。
どんな仕打ちにも音を上げないという彼女の決意は、今や脆くも崩れさっていた。人が一瞬にして廃人と化す様を目の当たりに見せつけられたのだからそれも無理はない。
(次には自分もこうされるのだ!)
という凄絶な恐怖感が、静音を完全なパニック状態に陥れていたのである。
「やッ、やめてェーッ!」
堪りかねたように、恵麻里が悲痛な叫び声を上げた。
「静音を放してあげて!それ以上薬を打ったりしないでッ!」
「やかましいね!今さら何だい?」
クリスはフンと鼻を鳴らし、
「マヌケめが。お前はそこでじっくりと見物していればいいんだよ。つまらない意地を張った代償が、どれ程高価く付くのかをね・・・」
注入器を握る手に力がこもる。
「最大量の8目盛り・・・。一息にこれだけのゾニアンを投与されれば、脳の配線はズタズタさ。イカレちまった頭で存分に後悔するといいわ」
「むファアア・・・・」
絶望に満ちた泣き声を洩らし、静音が溺れる寸前の人のように頭を仰かせた。
大量の新たな涙、よだれ、そして鼻水がはしたなく溢れ出て、白く美しい顔をドロドロに汚してゆく。大きな灰色の瞳は、恐怖のあまり今や小さく縮みきったようになっていた。
「やめて!お願いだからッ!」
最愛の友が死よりも恐ろしい地獄へと落とされかかっているのを眼前にして、恵麻里の哀訴は金切り声に近くなった。たとえ自分はどうなっても、これ以上静音を恐怖の縁に置くわけにはいかなかった。
「私があなたたちの言うことを聞けばいいんでしょう?聞くわ!何でも言うことを聞くから!・・・」
股間の淫靡な感覚も忘れ、前のめりの上体を狂おしく揺すりながら、ついに心底からの服従の叫びが口をつく。我知らずのうちにひざが折れてゆき、恵麻里はいつしか這いつくばって床に頭をこすりつけていた。
「こ、この通りです!どんなことでもやります!非合法な仕事を手伝えと言うならそうしますッ!だから・・・お願い・・・どうか静音をォオ・・・・」
言葉の最後は、絞り出すような嗚咽に変わってゆく。
「ほほォー・・・・」
振り向いたクリスの顔に、あの勝ち誇ったような嬌笑が再びゆっくりと広がってゆくのを、恵麻里は見た。その笑顔は再び溢れだした涙の中で大きく歪み、ユラユラと幻灯のように揺らめいていた・・・・。
クリスは手綱を引き絞ると、苦しげに喘ぐ静音を、彼女の元いた奥の部屋へ乱暴に押し込んだ。
「し、静音ッ!・・・」
思わず後を追おうとする恵麻里を、クリスは素早く身をひるがえして抱き留め、
「あわてるんじゃないわよ。心配しなくても、お前にもタップリと見せてやる。あの娘がどうなるのかをね。さあッ!・・・」
「あッ!・・・」
背中を突き飛ばされ、恵麻里は中腰のまま、のめるように奥の室内へと足を踏み込む。
・・・そこは六畳分くらいの、インテリアも何も無い、ごく小さな部屋だった。
照明も灯されておらず、天井近くにある明かり取りから弱々しく日が射し込んでいるだけで、室内はひどく薄暗い。
恵麻里の目の前・・・部屋のほぼ中央には静音がうつ伏せに倒れていたが、目を凝らすと、その前方にさらにもう一人、床に横たわっている人影が見える。
「?・・・・」
人影の正体が分からず、恵麻里が前進をためらっていると、続いて室内に入ってきたクリスがパチンと明かりを付けた。
「あッ!・・・」
思わず目を見開き、驚愕の叫びを洩らす。室内灯に照らし出された人物を、恵麻里は知っていたからだ。
(あの娘だわ!確か、遠山深雪ちゃん!・・・・)
・・・そう、それは、恵麻里がこの「サンクチュアリ」を訪れたそもそもの目的・・・つい数時間前に立体映像で見た、あのさらわれた女子高生だったのだ!
「フン、知ってるわよ。お前たちはこの娘を救い出すためにここへやって来たのよねェ?・・・だけど獲物(ゲーム)同士として巡り会うなんて皮肉なこと・・・」
つかつかと部屋の奥へ進みながら、クリスが嘲るように言った。
「可哀想だけど、この深雪という娘はもう二度と父親の元へ帰ることはないわ。さあ、起きなッ!」
床に伏せている少女を、荒々しく髪をつかんで引き起こす。クリスは完全に理性の歯止めを失っていた。
「うァ・・・・」
弱々しく喘ぎ、上体を持ち上げた少女は、恵麻里たち同様に全裸に剥かれ、両手を後ろに縛られている。
口元には静音の物と同じ型の轡がはめられ、溢れ出た涎や、そして涙の痕が、黒い染みとなって顔のあちこちを隈取っていた。
この組織に囚われてから約一日、散々に身体と精神をなぶり抜かれていたのだろう。オドオドとクリスを見上げる瞳には、屠殺寸前の家畜さながら、強い怯えと絶望しきったような色が浮かんでいる。
「この娘はね、私たちの業界用語で言えば、『砕けちまう』一歩手前にまで追い込んであるのさ。ホラ、見てごらん」
クリスが言い、少女の身体を仰向けにすると、閉じ合わせていた両脚を乱暴にかき広げた。
「!・・・・」
思わず恵麻里が息を呑む。
少女の内股は、自らが流した淫らな汗によってベトベトに汚れていた。
むき出しにされ、大きく反り返って、内側の襞模様をあからさまに見せている媚肉の縁。怒張しきってフードを押しのけ、ツヤツヤと血の色に光りながら屹立しているクリット。収縮を繰り返し、間断なく新たな涎を噴きこぼしている膣口・・・・。それらの構造全体が、まるで獲物を誘い込む食虫植物のようにヒクヒクと大きく蠢いている。
溢れ出た愛液は驚くほど多量で、床の上にも所々粘い溜まりが出来ていた。
「フフフ、無様だろう?膣にバイオチップを植え付けた上に、ゾニアンを限界スレスレにまで投与してあるのさ。つい昨日まではスカした名門校に通う箱入り娘だったかもしれないけれど、今じゃ汚い汁を垂れ流しの淫売嬢ってワケ。しかも・・・」
恵麻里に向かって言いながら、クリスはスーツのポケットからゾニアンの注入器を取り出した。
「この上さらにゾニアンを投与してやればどうなるか、そこでじっくり見物するといいわ!」
「うくゥーッ!ムーッ!・・・」
少女が轡の奥でくぐもった悲鳴を上げ、クリスの腕から逃れようと必死に身をもがき始めた。
涙の溜まった両目が、極限の恐怖のため一杯に見開かれている。その忌まわしい薬をこれ以上打ち込まれたらどうなるのか、彼女は本能的に悟っているようであった。
「おいおいクリス、短気はつまらんぞ。その娘は高く売れる。砕いちまってはブチ壊しじゃ!」
ドアの隙間から顔を突き出し、やれやれという調子でなだめにかかったアゲットに、クリスは怒気鋭い目を向け、
「あんたは引っ込んでなよアゲット!今度こそ、この強情な小娘どもに思い知らせてやるんだ。どんなに血の巡りが悪い身の程知らずでも、これを見れば一発で気が変わるだろうからね。さあ、いくよッ!」
言うが早いか、クリスは注入器を少女の右の乳房の上に押し当て、グイと力を込める。
「んッグゥゥゥゥゥーッ!・・・・」
恵麻里たちが思わずビクリと背をすくませたほど、まるで獣さながらの唸り声を轡の奥で上げ、少女は汗に濡れた裸身を強く弓なりにした。
「ああっ、ホントにやっちまった!・・・」
アゲットが叫ぶように言い、思わず室内に身を乗り出す。
硬直したまま瘧(おこり)のようにブルブルと痙攣していた少女の裸身は、数秒もすると急速に弛緩を始め、やがてクリスの腕の中でダラリと伸びきった。
「うァ・・ァアあ・・・」
くぐもった呻き声が洩れ、見開いた目の端から涙がこぼれ落ちる。その瞳は一瞬の間に、まるで霞がかかったかのように輝きを無くしていた。
「一丁上がり・・・」
声もなく見つめる恵麻里に向かってクリスが酷薄な調子で言い、少女の身体を縛めている拘束具を外し始めた。
ジットリと湿った手枷、足枷、そして棒状の轡が次々と取り外され、床の上に置かれたが、少女は自由になったはずの身体をピクリとももがこうとしない。まるで壊れたマリオネットのように、目を虚ろに開いたままクリスのなすがままになっていた。
「これが許容量を超えたゾニアンを注入された者の末路・・・つまり『砕けちまった』状態さ・・・」
クリスが少女の短髪を撫でつけながら言った。
「聞いたことがあるだろう?ゾニアンには、いっぺんに多量を投与すれば脳障害を起こす作用があるんだよ。・・・この娘のおつむはこれで一生クルクルパーさ。どんな治療を施してももう治らない。セックスのことしか考えないし考えられない、獣以下の卑しい生き物になったのさ!」
「そ、そんな・・・まさか・・・・」
あまりの事態に声を震わせる恵麻里に、少女はぼんやりと焦点の定まらない視線を向けた。その表情からは、クリスの言葉通り、人間らしい知性の色がすっぽりと欠落している。
「うふァ・・・・」
口元に薄笑いが浮かび、同時に驚くほど大量のよだれが溢れ出して、顎から胸元をベトベトに汚してゆく。少女は完全に痴呆状態になっていた。
「これほどの美形を砕いちまうのはもったいなかったけれど、この際仕方がないわ。こういう商品が『お好み』だという変わった客もいるから、まあ売れないこともないでしょう。・・・さて・・・・」
クリスは少女を床に寝かせると、すぐ側にうずくまっている静音を振り返る。
「!・・・・」
静音はクリスの視線にハッと身をすくませ、あわてて部屋の隅へと後ずさろうとしたが、たちまち首輪に繋がれた紐で手繰り寄せられ、背後から抱え込まれてしまった。
「今度はお前の番だね。覚悟はいいかい?ええ、静音ちゃん?・・・」
押し殺したような声音で言い、クリスは右手に持ったゾニアンの注入器をヒラヒラと振って見せた。
注入器にはすでに新たなアンプルが差し込まれ、注入量の調節ダイアルが最大の位置に回されている。
「むッ、むァァァァーッ!・・・・」
静音が轡の奥で激しい悲鳴を上げ、狂ったようにその裸身をもがき始めた。
何とかクリスの腕の中から逃れようとするのだが、縛められ、薬に冒された無力な身体ではどうにもならない。逆にガッチリと抱きすくめられ、首筋に注入器を押し当てられてしまった。
「ジタバタするんじゃないよ!さっきまでの勇ましさはどうしたんだい?何をされようが耐え抜く覚悟だったんだろう?その意地を通して『砕け散る』んなら本望じゃないか」
「むァッ、むふァーッ!・・・」
クリスの揶揄に、静音の絶叫が一段と激しくなる。
どんな仕打ちにも音を上げないという彼女の決意は、今や脆くも崩れさっていた。人が一瞬にして廃人と化す様を目の当たりに見せつけられたのだからそれも無理はない。
(次には自分もこうされるのだ!)
という凄絶な恐怖感が、静音を完全なパニック状態に陥れていたのである。
「やッ、やめてェーッ!」
堪りかねたように、恵麻里が悲痛な叫び声を上げた。
「静音を放してあげて!それ以上薬を打ったりしないでッ!」
「やかましいね!今さら何だい?」
クリスはフンと鼻を鳴らし、
「マヌケめが。お前はそこでじっくりと見物していればいいんだよ。つまらない意地を張った代償が、どれ程高価く付くのかをね・・・」
注入器を握る手に力がこもる。
「最大量の8目盛り・・・。一息にこれだけのゾニアンを投与されれば、脳の配線はズタズタさ。イカレちまった頭で存分に後悔するといいわ」
「むファアア・・・・」
絶望に満ちた泣き声を洩らし、静音が溺れる寸前の人のように頭を仰かせた。
大量の新たな涙、よだれ、そして鼻水がはしたなく溢れ出て、白く美しい顔をドロドロに汚してゆく。大きな灰色の瞳は、恐怖のあまり今や小さく縮みきったようになっていた。
「やめて!お願いだからッ!」
最愛の友が死よりも恐ろしい地獄へと落とされかかっているのを眼前にして、恵麻里の哀訴は金切り声に近くなった。たとえ自分はどうなっても、これ以上静音を恐怖の縁に置くわけにはいかなかった。
「私があなたたちの言うことを聞けばいいんでしょう?聞くわ!何でも言うことを聞くから!・・・」
股間の淫靡な感覚も忘れ、前のめりの上体を狂おしく揺すりながら、ついに心底からの服従の叫びが口をつく。我知らずのうちにひざが折れてゆき、恵麻里はいつしか這いつくばって床に頭をこすりつけていた。
「こ、この通りです!どんなことでもやります!非合法な仕事を手伝えと言うならそうしますッ!だから・・・お願い・・・どうか静音をォオ・・・・」
言葉の最後は、絞り出すような嗚咽に変わってゆく。
「ほほォー・・・・」
振り向いたクリスの顔に、あの勝ち誇ったような嬌笑が再びゆっくりと広がってゆくのを、恵麻里は見た。その笑顔は再び溢れだした涙の中で大きく歪み、ユラユラと幻灯のように揺らめいていた・・・・。
煉獄都市 第6章 慟哭・裏切りの黄昏(1)
五時のチャイムが鳴り終わると、クラブ活動を終えた乙女たちが、笑いさざめきながら一斉に校門の外へと溢れ出た。
「ごきげんよう・・・」
「ごきげんよう・・・」
別れの挨拶があちらこちらで囁かれ、女生徒たちは三々五々、めいめいの家路へと着く。
中には、校門前にズラリと並んだ出迎えの高級車に乗り込む者も多い。いつもと変わらない、蓬莱女学院の終業風景である。
旧副都心部からやや西北側に位置するこの超名門校は、厳しすぎるほどの淑女教育で全国にその名を知られている。
通学する女生徒たちにも良家の令嬢が多く、彼女たちの立ち居振る舞いは、乱れきったこの時代ではかえって滑稽とも映るほど優雅で折り目正しかった。
「ごきげんよう、瑠璃花(るりか)さま」
「ごきげんよう。また明日・・・」
三枝瑠璃花は、別れを告げる級友たちに軽く会釈を返すと、校門前に出て辺りを見回した。頭の後ろで左右に括り分けた栗色の巻き毛が、夕日に美しく波を打つ。
16才の瑠璃花は、この年齢にありがちな、やや野暮ったい印象の少女であった。
その顔つき、体つきは十分に美しく、健康的だが、反面、心持ち鈍(どん)な子供っぽさも残している。
あと1、2年もすれば余分な肉づきがしなやかに消え、素晴らしい美人に成長することは間違いないが、今の彼女は羽化する直前の蛹といった雰囲気だった。
(お父様、まだいらしていないわ・・・)
迎えに来ているはずの父の車が見当たらず、瑠璃花は所在なげに大通りの方を見やった。
今日は珍しく、父が二人で食事をしようと誘ってくれ、瑠璃花は朝からそれを楽しみにしていたのだ。
といって、父の遅刻を責める気分は全く起こってこない。それは、父が決してルーズな男ではないことを知っているからだ。ただ私立探偵という彼の職業には予定外の事態が付き物で、その結果、心ならずも時間を守れないことがあるだけなのだ。
瑠璃花にとって三枝祐太朗は血の繋がった実父ではなく、母親の再婚相手、つまりは継父である。しかし祐太朗は実の父親以上の愛情を瑠璃花に注いでくれ、瑠璃花も彼になついていた。
(・・・お仕事が長引いているのかしら?でもひどく遅くなるのなら私のコミュニケーター(携帯端末)に連絡を下さるはずだから、いらっしゃるまでここで待ってみよう・・・)
瑠璃花がそう考えて傍らの街路樹の側へと移動しかけた時、その街路樹の下から人影がスッと現れて彼女に声をかけた。
「瑠璃花ちゃん・・・」
「?・・・・」
呼びかけが不意だったので瑠璃花はギョッと身を引く格好になり、しげしげとその人物を見つめ返した。
相手は若い女性で、ラメの入ったミニのワンピースに身を包んでいる。その派手な身なりのため、瑠璃花はそれが古くからの顔見知りだということに気が付くまで少し時間がかかった。
「まあ、恵麻里さま・・・」
「久しぶりね。元気にしていた?」
その女性は、継父の古い友人の一人娘、早坂恵麻里だった。
年齢は瑠璃花と二つほどしか違わないはずだが、その若さで私立探偵を独立開業しているというだけあって、瑠璃花よりも遥かに大人びた印象を受ける。
継父祐太朗が、恵麻里の亡くなった親代わりに世話を焼いていることもあって、瑠璃花も中学生の時から恵麻里と親戚同様に付き合い、彼女を実の姉のように慕っていた。
(それにしても・・・・)
と、瑠璃花はやや訝しむ目つきになって相手を見つめた。
恵麻里の着ているワンピースは胸ぐりが大きく開いた紫色の派手な物で、股下の丈も下着がチラリと覗いているほどに短い。
崩れたところのない清楚な身なりを常としている恵麻里に、その下卑た水商売風のファッションはいかにも不釣り合いだった。
「この格好、おかしい?」
瑠璃花の視線に気が付き、恵麻里はややばつが悪そうにミニの裾を引っ張った。
「普段はこんな服着ないものね。・・・ちょっとワケありなの。実は・・・・」
「ああ、お仕事の御都合なんですね。つまり、変装ってこと?」
「え、ええ、そうなの。今日は歓楽街で張り込みをしなければならなくて、その場にふさわしい格好をしてみたのよ」
恵麻里は、瑠璃花の勝手な想像に慌てた様子でうなずいて見せ、
「それより、ちょっと付き合ってもらえないかしら?急で申し訳ないんだけど、あなたにお話があるの」
「私に?まあ、何でしょう?」
思わず問い返しながら、瑠璃花は改めて相手の顔を見つめ直す。
何故か恵麻里の態度は、どことなく硬く、ぎこちなさが感じられた。
一見普段通りの理知的で朗らかな表情なのだが、時折フッと、これまでに見たことのない暗い陰りが差すのだ。
(・・・お仕事でお疲れなのかしら?・・・張り込みの途中だとおっしゃっていたから、きっと緊張が続いていらっしゃるのね・・・・)
瑠璃花はそう考えて曖昧に納得したが、真相は無論、その通りではない。
恵麻里は今や、瑠璃花を地獄へと引きずり込もうとする冥界からの使者であった。
クリス・宮崎の恫喝に屈した恵麻里は、彼女の命令を受けて、三枝瑠璃花を新たな獲物として拐かすために、この蓬莱女学園へと現れたのだから!・・・・
「ごきげんよう・・・」
「ごきげんよう・・・」
別れの挨拶があちらこちらで囁かれ、女生徒たちは三々五々、めいめいの家路へと着く。
中には、校門前にズラリと並んだ出迎えの高級車に乗り込む者も多い。いつもと変わらない、蓬莱女学院の終業風景である。
旧副都心部からやや西北側に位置するこの超名門校は、厳しすぎるほどの淑女教育で全国にその名を知られている。
通学する女生徒たちにも良家の令嬢が多く、彼女たちの立ち居振る舞いは、乱れきったこの時代ではかえって滑稽とも映るほど優雅で折り目正しかった。
「ごきげんよう、瑠璃花(るりか)さま」
「ごきげんよう。また明日・・・」
三枝瑠璃花は、別れを告げる級友たちに軽く会釈を返すと、校門前に出て辺りを見回した。頭の後ろで左右に括り分けた栗色の巻き毛が、夕日に美しく波を打つ。
16才の瑠璃花は、この年齢にありがちな、やや野暮ったい印象の少女であった。
その顔つき、体つきは十分に美しく、健康的だが、反面、心持ち鈍(どん)な子供っぽさも残している。
あと1、2年もすれば余分な肉づきがしなやかに消え、素晴らしい美人に成長することは間違いないが、今の彼女は羽化する直前の蛹といった雰囲気だった。
(お父様、まだいらしていないわ・・・)
迎えに来ているはずの父の車が見当たらず、瑠璃花は所在なげに大通りの方を見やった。
今日は珍しく、父が二人で食事をしようと誘ってくれ、瑠璃花は朝からそれを楽しみにしていたのだ。
といって、父の遅刻を責める気分は全く起こってこない。それは、父が決してルーズな男ではないことを知っているからだ。ただ私立探偵という彼の職業には予定外の事態が付き物で、その結果、心ならずも時間を守れないことがあるだけなのだ。
瑠璃花にとって三枝祐太朗は血の繋がった実父ではなく、母親の再婚相手、つまりは継父である。しかし祐太朗は実の父親以上の愛情を瑠璃花に注いでくれ、瑠璃花も彼になついていた。
(・・・お仕事が長引いているのかしら?でもひどく遅くなるのなら私のコミュニケーター(携帯端末)に連絡を下さるはずだから、いらっしゃるまでここで待ってみよう・・・)
瑠璃花がそう考えて傍らの街路樹の側へと移動しかけた時、その街路樹の下から人影がスッと現れて彼女に声をかけた。
「瑠璃花ちゃん・・・」
「?・・・・」
呼びかけが不意だったので瑠璃花はギョッと身を引く格好になり、しげしげとその人物を見つめ返した。
相手は若い女性で、ラメの入ったミニのワンピースに身を包んでいる。その派手な身なりのため、瑠璃花はそれが古くからの顔見知りだということに気が付くまで少し時間がかかった。
「まあ、恵麻里さま・・・」
「久しぶりね。元気にしていた?」
その女性は、継父の古い友人の一人娘、早坂恵麻里だった。
年齢は瑠璃花と二つほどしか違わないはずだが、その若さで私立探偵を独立開業しているというだけあって、瑠璃花よりも遥かに大人びた印象を受ける。
継父祐太朗が、恵麻里の亡くなった親代わりに世話を焼いていることもあって、瑠璃花も中学生の時から恵麻里と親戚同様に付き合い、彼女を実の姉のように慕っていた。
(それにしても・・・・)
と、瑠璃花はやや訝しむ目つきになって相手を見つめた。
恵麻里の着ているワンピースは胸ぐりが大きく開いた紫色の派手な物で、股下の丈も下着がチラリと覗いているほどに短い。
崩れたところのない清楚な身なりを常としている恵麻里に、その下卑た水商売風のファッションはいかにも不釣り合いだった。
「この格好、おかしい?」
瑠璃花の視線に気が付き、恵麻里はややばつが悪そうにミニの裾を引っ張った。
「普段はこんな服着ないものね。・・・ちょっとワケありなの。実は・・・・」
「ああ、お仕事の御都合なんですね。つまり、変装ってこと?」
「え、ええ、そうなの。今日は歓楽街で張り込みをしなければならなくて、その場にふさわしい格好をしてみたのよ」
恵麻里は、瑠璃花の勝手な想像に慌てた様子でうなずいて見せ、
「それより、ちょっと付き合ってもらえないかしら?急で申し訳ないんだけど、あなたにお話があるの」
「私に?まあ、何でしょう?」
思わず問い返しながら、瑠璃花は改めて相手の顔を見つめ直す。
何故か恵麻里の態度は、どことなく硬く、ぎこちなさが感じられた。
一見普段通りの理知的で朗らかな表情なのだが、時折フッと、これまでに見たことのない暗い陰りが差すのだ。
(・・・お仕事でお疲れなのかしら?・・・張り込みの途中だとおっしゃっていたから、きっと緊張が続いていらっしゃるのね・・・・)
瑠璃花はそう考えて曖昧に納得したが、真相は無論、その通りではない。
恵麻里は今や、瑠璃花を地獄へと引きずり込もうとする冥界からの使者であった。
クリス・宮崎の恫喝に屈した恵麻里は、彼女の命令を受けて、三枝瑠璃花を新たな獲物として拐かすために、この蓬莱女学園へと現れたのだから!・・・・
煉獄都市 第6章 慟哭・裏切りの黄昏(2)
いかなる方法でか、恵麻里たちの経歴を綿密に調べ上げていたらしいクリスは、恵麻里が三枝瑠璃花と親しい間柄であることも承知済みだった。つまり恵麻里ならば怪しまれずに瑠璃花に近づき、苦もなく彼女を拉致できることも当然計算されていたのである。
どうやらクリス達は、性の商品とする目的で、以前から瑠璃花に目を付けていたらしい。そこで罠に掛かった恵麻里を、すかさず新たな誘拐に利用することを思い付いたのだろう。
S・Tである自分が召喚犯罪に手を貸すなど、これ以上は無い恥であり、屈辱である。しかし相棒の静音を人質に取られ、自らの肉体も無惨に改造されてしまった今、恵麻里には大人しく敵の言いなりになる以外、選択の余地は無かったのだ。
「ここで立ち話も何だから、どこかでお茶をしましょう?私、車で来ているから、どうぞ乗ってちょうだい」
そう瑠璃花に言って、恵麻里は通りの反対側を指差した。
なるほど、見覚えのある恵麻里の青いハイブリッドカーが停車しているのが見える。
(どうしよう・・・・)
父との約束にチラリと考えを巡らせ、瑠璃花は一瞬ためらう気持ちになった。しかし考えてみれば、ここで待ち続けても父が確実に現れるという保証はないのだ。だとすると、久しぶりに訪ねてくれた恵麻里とこのまま出かけてしまうのも、悪くない選択には違いない。
「分かりましたわ」
思い切りよくそう言って、瑠璃花は手にした鞄から自分用の携帯端末を取り出した。
「でもその前に、ちょっと電話をさせて下さい」
「あら、先約があったの?だったら悪かったわ・・・」
「いえ、そんな大げさなのじゃないんです。でも一応、お父様に断っておかないと・・・」
言いながら、瑠璃花が父の呼び出しコードをプッシュしかけた時、大通りを左から走ってきたアイボリー色の高級乗用車が、恵麻里の車のすぐ後ろに停車するのが見えた。
「あ・・・・」
恵麻里が小さく声を上げた。
車から降り立ったのは五十年輩の格幅の良い紳士で、グレンチェックのザックリしたジャケットを羽織り、度の強そうな鼈甲ぶちの眼鏡をかけている。
彼は恵麻里が小さな頃から肉親同様に慕ってきた亡父の友人・・・つまりは瑠璃花の現在の継父、三枝祐太朗その人だった。
「お父様っ!」
弾むような声で呼びかけた瑠璃花に、祐太朗も笑顔で手を挙げて応えながら横断歩道を渡ってきたが、校門の間近まで来てギョッとした様子で立ち止まった。
「やあ恵麻里じゃないか。久しぶりだね。・・・今日はどうしてこんな所へ?」
朗らかな表情のまま、しかし怪しむような目つきになって、祐太朗は恵麻里を眺めた。
「こんにちは叔父様。あの、ちょっと、瑠璃花ちゃんに用事があって・・・」
思いがけない祐太朗の出現に、恵麻里はどぎまぎとしながら言葉を継ぐ。彼が、恵麻里のいつもと違う下卑た装いに不審の念を抱いているのは明らかだった。
むろん恵麻里とて、自ら望んでこんな格好をしているわけではない。
はぎ取られた服を返してくれるよう、懸命にクリスに懇願したのだが許されず、代わりにこの淫らなワンピースを与えられたのだ。
顔見知りの前に下品な姿をさらすことによって、更なる恥辱を恵麻里に味あわせようという、クリスのサディスティックな企みであった。
「お父様、恵麻里様は今、お仕事でちょっと変装をなさっているのですって」
継父の不審そうな視線に気が付いた瑠璃花がその場を取りなすように言ってくれたが、祐太朗は納得していない様子で、
「変装というと、盛り場で張り込みでもするのかね?」
「は、はい。調査対象の女性が風俗店に勤めていますので・・・」
「・・・ふうむ、仕事熱心なのは結構だが、その格好で街をうろつくのは感心しないな。ちょっと扇情的すぎて、余計なトラブルに巻き込まれないとも限らないぞ」
「・・・・」
「それに、あまり効果的な変装だとは思えん。服装がふしだらなだけで、化粧っ気の無いお前の顔には全く似合っていないよ。それではすぐに怪しいと見破られてしまう」
「はい、気を付けます・・・・」
うなだれ、顔から火の出るような思いで、恵麻里は祐太朗の言葉を聞いた。
彼の厳しい態度は、同業者としての忠告というより、自分が恵麻里の父親代わりだという自負、つまりは愛情故のものだろう。しかし恵麻里は、もうその愛情に応えられないばかりか、彼を裏切り、その愛娘を毒牙にかけようとしているのだ。
(ごめんなさい叔父様!・・・私もう、叔父様に顔向け出来ないことになってしまったの!・・・・)
心中で悲痛な声を上げながら、恵麻里はミニの裾を固く握り、僅かでも下へ引き下げようとする。かすかに覗いている薄紫色をしたパンティーも、クリスに無理やり身に着けさせられたものである。面積の小さい、下品なデザインのそれを、少しでも祐太朗の目から覆い隠したかった。
「ところで・・・」
と祐太朗はようやく柔和な口調に戻って、
「私は今晩、瑠璃花と食事の約束をしていたんだが、恵麻里も一緒にどうかね?・・・この娘に何の用事があったのか、食事をしながら私にも聞かせてもらえんか?」
「はあ、それは・・・・」
恵麻里は思わず口ごもった。
祐太朗に同行されては、瑠璃花を拐かすチャンスは皆無になってしまう。それに何より、ゆっくりと食事をする時間などはなかった。
現在恵麻里の肉体は、先程までの淫靡な感覚がまるでウソのようになりを潜めていて、歩くのにも何の不自由もない。それは、埋め込まれたバイオチップを一時的に不活性化する薬をアゲット医師に処方してもらったからだ。
しかしその効果は約二時間弱と限られていて、「サンクチュアリ」を出た時間から考えると、残された猶予はもう一時間程しか無いはずだった。
もしも食事の最中に薬の効果が切れたりしたら、恵麻里は衆人監視の中であられもない痴態をさらすことになってしまう。そうなればとても瑠璃花をさらうどころではない。
では、今ここで祐太朗に全てを打ち明け、救いを求めてはどうか?彼は名うてのS・Tだし、恵麻里よりもはるかに修羅場をくぐっている。この窮状を打破するのに、これ以上はない味方になってくれるだろう。
・・・いや、それも出来ない相談だった。
恵麻里は「サンクチュアリ」から出される時、クリスから、この先自分には絶えず監視が付き、少しでも不審な行動をとれば静音の無事は保証できないと脅されていたからだ。
今は周囲に見張り役らしい人影は見えず、クリスの言ったことが真実なのかハッタリなのかは分からない。しかしハッタリでなかったとしたら、静音は確実に廃人にされてしまうのだ。そんな危険な賭けを打つ勇気は、今の恵麻里にはとても湧いてこなかった。
「お父様、恵麻里様には私がお願いして来ていただいたんです。二人きりでお話ししたい事があったので・・・」
唐突に、思いもかけない言葉を挟んできた瑠璃花を、恵麻里はエッという顔になって振り返った。
祐太朗も意外そうな表情になり、
「おいおい瑠璃花、お前、今日は外で一緒に食事をする予定を承知していたはずだろ?私をスッぽかすつもりだったのかい?」
「ごめんなさい、急に困ったことが出来たもので・・・。恵麻里様と女同士の相談がしたいと思って・・・」
言い訳をしながら、瑠璃花は恵麻里に向かって軽く片目を閉じてみせた。
「一緒に食事を」という父の提案に何故か困惑している様子の恵麻里を見て、事情は分からないが瑠璃花なりに気を利かせたつもりなのだろう。
そんな心根の優しい少女を、自分は今から地獄に突き落とさなければならない・・・。恵麻里の心は激しい自責の念で張り裂けんばかりだった。
「ふうむ・・・」
祐太朗は二人の少女の顔を見比べるように眺めていたが、不意に思いついた顔になり、
「その『相談』というのは、いわゆる『恋の悩み』ってヤツじゃないだろうね?・・・瑠璃花も年齢相応に色気付いてきたのかな?」
「イヤですわお父様。そんなんじゃありません!」
「ハッハッハ!・・・分かった分かった。何でも大いに相談してきなさい。二人きりでね」
ふくれっ面になってブレザーの胸を反らせた瑠璃花に、祐太朗もついに破顔し、大きな笑い声を立てた。
「年寄りは退散するよ。今日は母さんも婦人会の旅行で家にいないから、私はにわかやもめってワケだな。せいぜい一人、孤独を楽しむさ」
「ごめんなさい、お父様・・・」
「いいんだよ、食事はまた今度にしよう。しかし帰宅が遅くなるようなら、必ず家に電話をするんだよ。・・・それじゃあ恵麻里、瑠璃花を頼む」
「ハイ。済みません、叔父様・・・」
苦笑しながら横断歩道を引き返していく祐太朗に、恵麻里は深く頭を下げようとしたが、出来なかった。
いつの間にか目の縁一杯に盛り上がってきた涙が、下を向いた途端、一気にこぼれ落ちてしまいそうだったからである・・・・。
どうやらクリス達は、性の商品とする目的で、以前から瑠璃花に目を付けていたらしい。そこで罠に掛かった恵麻里を、すかさず新たな誘拐に利用することを思い付いたのだろう。
S・Tである自分が召喚犯罪に手を貸すなど、これ以上は無い恥であり、屈辱である。しかし相棒の静音を人質に取られ、自らの肉体も無惨に改造されてしまった今、恵麻里には大人しく敵の言いなりになる以外、選択の余地は無かったのだ。
「ここで立ち話も何だから、どこかでお茶をしましょう?私、車で来ているから、どうぞ乗ってちょうだい」
そう瑠璃花に言って、恵麻里は通りの反対側を指差した。
なるほど、見覚えのある恵麻里の青いハイブリッドカーが停車しているのが見える。
(どうしよう・・・・)
父との約束にチラリと考えを巡らせ、瑠璃花は一瞬ためらう気持ちになった。しかし考えてみれば、ここで待ち続けても父が確実に現れるという保証はないのだ。だとすると、久しぶりに訪ねてくれた恵麻里とこのまま出かけてしまうのも、悪くない選択には違いない。
「分かりましたわ」
思い切りよくそう言って、瑠璃花は手にした鞄から自分用の携帯端末を取り出した。
「でもその前に、ちょっと電話をさせて下さい」
「あら、先約があったの?だったら悪かったわ・・・」
「いえ、そんな大げさなのじゃないんです。でも一応、お父様に断っておかないと・・・」
言いながら、瑠璃花が父の呼び出しコードをプッシュしかけた時、大通りを左から走ってきたアイボリー色の高級乗用車が、恵麻里の車のすぐ後ろに停車するのが見えた。
「あ・・・・」
恵麻里が小さく声を上げた。
車から降り立ったのは五十年輩の格幅の良い紳士で、グレンチェックのザックリしたジャケットを羽織り、度の強そうな鼈甲ぶちの眼鏡をかけている。
彼は恵麻里が小さな頃から肉親同様に慕ってきた亡父の友人・・・つまりは瑠璃花の現在の継父、三枝祐太朗その人だった。
「お父様っ!」
弾むような声で呼びかけた瑠璃花に、祐太朗も笑顔で手を挙げて応えながら横断歩道を渡ってきたが、校門の間近まで来てギョッとした様子で立ち止まった。
「やあ恵麻里じゃないか。久しぶりだね。・・・今日はどうしてこんな所へ?」
朗らかな表情のまま、しかし怪しむような目つきになって、祐太朗は恵麻里を眺めた。
「こんにちは叔父様。あの、ちょっと、瑠璃花ちゃんに用事があって・・・」
思いがけない祐太朗の出現に、恵麻里はどぎまぎとしながら言葉を継ぐ。彼が、恵麻里のいつもと違う下卑た装いに不審の念を抱いているのは明らかだった。
むろん恵麻里とて、自ら望んでこんな格好をしているわけではない。
はぎ取られた服を返してくれるよう、懸命にクリスに懇願したのだが許されず、代わりにこの淫らなワンピースを与えられたのだ。
顔見知りの前に下品な姿をさらすことによって、更なる恥辱を恵麻里に味あわせようという、クリスのサディスティックな企みであった。
「お父様、恵麻里様は今、お仕事でちょっと変装をなさっているのですって」
継父の不審そうな視線に気が付いた瑠璃花がその場を取りなすように言ってくれたが、祐太朗は納得していない様子で、
「変装というと、盛り場で張り込みでもするのかね?」
「は、はい。調査対象の女性が風俗店に勤めていますので・・・」
「・・・ふうむ、仕事熱心なのは結構だが、その格好で街をうろつくのは感心しないな。ちょっと扇情的すぎて、余計なトラブルに巻き込まれないとも限らないぞ」
「・・・・」
「それに、あまり効果的な変装だとは思えん。服装がふしだらなだけで、化粧っ気の無いお前の顔には全く似合っていないよ。それではすぐに怪しいと見破られてしまう」
「はい、気を付けます・・・・」
うなだれ、顔から火の出るような思いで、恵麻里は祐太朗の言葉を聞いた。
彼の厳しい態度は、同業者としての忠告というより、自分が恵麻里の父親代わりだという自負、つまりは愛情故のものだろう。しかし恵麻里は、もうその愛情に応えられないばかりか、彼を裏切り、その愛娘を毒牙にかけようとしているのだ。
(ごめんなさい叔父様!・・・私もう、叔父様に顔向け出来ないことになってしまったの!・・・・)
心中で悲痛な声を上げながら、恵麻里はミニの裾を固く握り、僅かでも下へ引き下げようとする。かすかに覗いている薄紫色をしたパンティーも、クリスに無理やり身に着けさせられたものである。面積の小さい、下品なデザインのそれを、少しでも祐太朗の目から覆い隠したかった。
「ところで・・・」
と祐太朗はようやく柔和な口調に戻って、
「私は今晩、瑠璃花と食事の約束をしていたんだが、恵麻里も一緒にどうかね?・・・この娘に何の用事があったのか、食事をしながら私にも聞かせてもらえんか?」
「はあ、それは・・・・」
恵麻里は思わず口ごもった。
祐太朗に同行されては、瑠璃花を拐かすチャンスは皆無になってしまう。それに何より、ゆっくりと食事をする時間などはなかった。
現在恵麻里の肉体は、先程までの淫靡な感覚がまるでウソのようになりを潜めていて、歩くのにも何の不自由もない。それは、埋め込まれたバイオチップを一時的に不活性化する薬をアゲット医師に処方してもらったからだ。
しかしその効果は約二時間弱と限られていて、「サンクチュアリ」を出た時間から考えると、残された猶予はもう一時間程しか無いはずだった。
もしも食事の最中に薬の効果が切れたりしたら、恵麻里は衆人監視の中であられもない痴態をさらすことになってしまう。そうなればとても瑠璃花をさらうどころではない。
では、今ここで祐太朗に全てを打ち明け、救いを求めてはどうか?彼は名うてのS・Tだし、恵麻里よりもはるかに修羅場をくぐっている。この窮状を打破するのに、これ以上はない味方になってくれるだろう。
・・・いや、それも出来ない相談だった。
恵麻里は「サンクチュアリ」から出される時、クリスから、この先自分には絶えず監視が付き、少しでも不審な行動をとれば静音の無事は保証できないと脅されていたからだ。
今は周囲に見張り役らしい人影は見えず、クリスの言ったことが真実なのかハッタリなのかは分からない。しかしハッタリでなかったとしたら、静音は確実に廃人にされてしまうのだ。そんな危険な賭けを打つ勇気は、今の恵麻里にはとても湧いてこなかった。
「お父様、恵麻里様には私がお願いして来ていただいたんです。二人きりでお話ししたい事があったので・・・」
唐突に、思いもかけない言葉を挟んできた瑠璃花を、恵麻里はエッという顔になって振り返った。
祐太朗も意外そうな表情になり、
「おいおい瑠璃花、お前、今日は外で一緒に食事をする予定を承知していたはずだろ?私をスッぽかすつもりだったのかい?」
「ごめんなさい、急に困ったことが出来たもので・・・。恵麻里様と女同士の相談がしたいと思って・・・」
言い訳をしながら、瑠璃花は恵麻里に向かって軽く片目を閉じてみせた。
「一緒に食事を」という父の提案に何故か困惑している様子の恵麻里を見て、事情は分からないが瑠璃花なりに気を利かせたつもりなのだろう。
そんな心根の優しい少女を、自分は今から地獄に突き落とさなければならない・・・。恵麻里の心は激しい自責の念で張り裂けんばかりだった。
「ふうむ・・・」
祐太朗は二人の少女の顔を見比べるように眺めていたが、不意に思いついた顔になり、
「その『相談』というのは、いわゆる『恋の悩み』ってヤツじゃないだろうね?・・・瑠璃花も年齢相応に色気付いてきたのかな?」
「イヤですわお父様。そんなんじゃありません!」
「ハッハッハ!・・・分かった分かった。何でも大いに相談してきなさい。二人きりでね」
ふくれっ面になってブレザーの胸を反らせた瑠璃花に、祐太朗もついに破顔し、大きな笑い声を立てた。
「年寄りは退散するよ。今日は母さんも婦人会の旅行で家にいないから、私はにわかやもめってワケだな。せいぜい一人、孤独を楽しむさ」
「ごめんなさい、お父様・・・」
「いいんだよ、食事はまた今度にしよう。しかし帰宅が遅くなるようなら、必ず家に電話をするんだよ。・・・それじゃあ恵麻里、瑠璃花を頼む」
「ハイ。済みません、叔父様・・・」
苦笑しながら横断歩道を引き返していく祐太朗に、恵麻里は深く頭を下げようとしたが、出来なかった。
いつの間にか目の縁一杯に盛り上がってきた涙が、下を向いた途端、一気にこぼれ落ちてしまいそうだったからである・・・・。
煉獄都市 第6章 慟哭・裏切りの黄昏(3)
「気持ちがいいでしょう?さあ、もっと身体の力を抜きなさいな・・・」
甘い声音と共に、湯の跳ね返る音が大きく響き渡る。
静音はクリスに後ろから抱きかかえられるようにして湯船に入れられていた。
そこは最前まで恵麻里達のいたオフィスルーム、つまり「サンクチュアリ」3F西端の部屋の東隣にあるバスルームで、壁や洗い場の床、浴槽まで全てが、淡いピンク色に塗られていた。
部屋は「サンクチュアリ」1Fにある屋内プールをそのままスケールダウンしたようなドーム状の造りで、かなりの広さと天井の高さがある。清潔に磨き込まれた浴槽も、4、5人が同時に入れるほどのゆったりした物だった。
本来はクリスのプライベートなバスルームなのだが、その広さゆえ、拐かしてきた少女たちの調教場としても頻繁に利用されている。新たな生贄として、静音もさっそくここへ引かれてきたのだった。
「本当にステキな身体と肌ね。恵麻里ちゃんの身体も素晴らしいけれど、あなたのはそれ以上。まさに『マーメイド』の素質十分だわ・・・」
「あッ・・・」
白い豊かな裸身を抱きすくめられ、うなじに唇を這わされて、静音は痛々しくもあえかな悲鳴を上げる。
革製の首輪、そして口元にはめられていた円柱状の轡は外されていたが、両手首を背中に束ね留められているのは変わらない。座った姿勢で後ろから抱え込まれていては、身体の自由はほぼ奪い尽くされているも同然だった。
今は当然クリスも全裸になり、輝くような裸身をあからさまにしている。その完璧な女体が艶めかしい弾力を伴って背中に押し当てられるたび、静音は倒錯的な官能美に焼かれて、その身を細かく震わせながら仰け反らせてしまうのだった。
(恥ずかしい!もうイヤ!・・・何故・・何故こんなことになってしまったの?・・・ああ、誰か助けに来て下さい!・・・・)
半日前には想像すらしなかった、惨めすぎる自らの境遇。今の今でさえ、これが現実の出来事とは信じられない。まさに悪夢だ。
考えてみれば、あの深雪という少女を「サンクチュアリ」の裏口に連れ出したのも、クリスにそう命じられたアゲット博士だったのだろう。最初から、静音を車からおびき出し、拉致する作戦だったのだ。
その失態のために、静音はパートナーをサポートするという、最も重要な使命を果たすことが出来なかった。結果、恵麻里は処女を奪われた上に肉体を惨たらしく改造され、犯罪組織のために屈辱的な協力を強いられている。そして自分もまた、いずれは・・・。
自らのミスが招いた悲惨すぎる運命に、静音の心中では、後悔と絶望の念が黒々と渦を巻いていた。
「そろそろ十分に暖まったかしら?じゃあ今度は、念入りに身体を洗ってあげましょうね。さ、上がりなさい」
「・・・も、もう許してください。手を解いてくだされば、身体は自分で洗えます・・・」
「まだそんな寝ぼけたことを言ってるの?獲物(ゲーム)に、自分の身体の世話を焼く自由なんかあるものですか。さあ早く!」
「あ・・・・」
背中を押し上げるように促されて、静音はやむを得ずに両足を踏ん張り、弱々しく立ち上がった。
クリスはすっかり元の柔和な態度に戻っていたが、それは二人の少女探偵を完全に屈服させた満足感による、一時的な「仮面」だ。その仮面の下に潜む、凶暴で邪(よこしま)な素顔を知ってしまった静音には、もはや魔女の指図に逆らうだけの勇気は残っていなかった。
・・・生きながら躯(むくろ)同然の存在に造り替えられてしまった、深雪という少女。壊れたゼンマイ人形然としたあの残酷な姿が、静音の心に凄まじい恐怖を植え付け、がんじがらめに就縛してしまっていたのだ。
恥ずかしさをこらえながらおずおずと脚を上げ、浴槽をまたぎ越す。溢れ出た湯ですべすべと輝いている洗い場に立った途端、
「ああ・・・・」
湯のぼせと共に、肉体的、精神的な疲労がドッと押し寄せ、静音はその朱唇から堪えかねたような喘ぎを洩らすと、クタクタと前屈みにひざまずいてしまった。
「あらあら、だらしのないこと・・・」
クリスが側に立ち、まさにハンターが仕留めた獲物の格を確かめるかのように、薄ら笑いを浮かべながら眺め降ろす。
今や息も絶え絶えの様子のその獲物は、クリスが端なくも言ったとおり、実に見事な肢体の充実を誇っていた。
恵麻里の女体も、その年齢からすればこの上なく美しく発達したものだが、静音のそれはある種の迫力すらも感じさせるようなグラマラスぶりだ。と言って、決して太っているという印象はない。下世話な言い方をすれば、出るべき所は十分以上に出ていて、締まるべき所は締まっているのだ。
その見事なプロポーションが、異国の血による白磁のような、しかも18歳の張り切った肌に包まれているのだから、クリスが思わず感じ入ったのも当然だった。
特に素晴らしいのは圧倒的なボリュームを誇るJカップの乳房で、上体を前に折った姿勢のため、まるで水を目一杯に詰めた巨大な風船のように、重々しく並んで垂れ下がっている。
「大分グロッキーなようだけど、お楽しみはまだまだこれからよ。さあ、しっかりなさいな」
「あうッ!・・・」
長く美しい髪を鷲掴みにされ、乱暴に仰かされる。ふくれあがった両の乳房がブルンと前に振り出され、ピシャリという哀しげな音と共に腹に打ち付けられた。
「もっと脚を大きく開いて。前も後ろも綺麗に洗ってあげるから」
「本当に、洗うのは自分で出来ます。だから手を・・・お願いです・・・・」
「同じことを何度も言わせないで。今のあなたには何一つ、自分で自由に出来ることなんてないのよ。私に任せて、お人形のように大人しくしていればいいの。ほらッ!・・・」
「あッ!・・・」
湯船の中の時と同様に、座った姿勢で後ろから抱え込まれ、両脚をかき開かれる。同時に大股に拡げたクリスの脚が、両側から静音の足首の内側へと割り込まされてきた。
まるでプロレスの固め技をかけられたように、女体の中心を惨めに開ききったポーズで、静音の裸身はガッチリと固定されてしまった。
「ひどいッ!・・・こんな!・・・・」
「今さら何を恥ずかしがることがあるの?あなたの身体は、さっきお尻の穴まで残らず私に見られちゃってるのに・・・」
わざと下卑た言い方をしてみせながら、クリスは右横の壁の一部に手のひらを押し当てた。その部分は浅く半円形に抉られていて、壁の内部には液体石鹸のタンクが仕込まれているのだ。
ジュッ・・・・。
蓄えられていた石鹸がクリスの手の圧力に反応して壁の表面からみるみる滲み出し、手のひらの上で瞬時に泡立った。
床や壁と同じ、美しいピンク色のその泡を、クリスは静音の裸身を撫で下ろすよう、丁寧に塗りつけてゆく・・・。
「あッ!イヤですッ!・・・」
上気した身体をギクッと竦ませ、静音は哀しげな悲鳴を上げた。
「どうしてイヤなの?汗と涙と、ばっちい汁でドロドロに汚れてるのを綺麗にしてあげてるだけじゃない。それとも、そんな不潔な身体のままでずーっといたいワケ?」
「そ、そんな・・・」
「不潔」という、獣を形容するような揶揄が静音の心をザクリと抉ってくる。
「洗うのだけは自分で・・・。お願いします。どうか、どうか・・・・」
涙にふくれた眼で背後を振り返り、すがりつくような哀訴を繰り返す。しかし見つめ返すクリスの青い瞳には、いささかの仮借の色も宿っていなかった。
「遠慮をせずに私に任せなさいって言ってるでしょう?さあ、そのすごいオッパイも綺麗にしてあげるわ」
「やッ、許して下さいッ!・・・」
キュッ、キュルッ、キュッ、キュッ・・・・。
クリスの両手が、クリームの入った軟質の容器を絞り上げるように、静音の胸元で淫靡な動きを繰り返す。
湯上がりで一面薄紅く染まり、縦長にピンと張り切った二房の重たい肉が、泡と共にヌルヌルと揉み込まれ、さらに痛々しく鬱血の度合いを強めていくたびに、静音は感電したかのように激しく裸身を反らせ、悲鳴を噴きこぼし続けるのだった。
「あうッ!・・・いけませんッ!・・うッ!・・ああッ!・・・」
「何だかんだとイヤがりながら、身体の方はビンビンに歓んでるじゃない。フフフ、そうよね、静音ちゃんの身体は、今やエッチのかたまりだもんねェ・・・・」
「そ、そんなこと・・・むうッ!・・・・」
必死に反駁しようとする声が、刺激に堪えかね、我知らずにほとばしらせてしまう呻きによって上手く続かない。
静音が身体を洗われることを頑なに拒んだのは、まさにクリスの言うとおり、自らの肉体がエクスタシーに完全に支配され尽くそうとしているからだった。
恵麻里が犯罪行為への協力を誓ったことによって、クリスは静音を廃人にしてしまうことだけは思い止まったものの、呵責の手を緩めたわけでは無論ない。このバスルームに入れられる前に、静音は泣きじゃくっての懇願も虚しく、その身体に一目盛り分の新たなゾニアンを打ち込まれていたのだ。
脳障害を起こす限界と言われる八目盛りには程遠いが、若い肉体を再び性の狂気に導くには十分すぎる処方量である。静音の未だ無垢な女体の奥では、それと裏腹に荒々しい官能の嵐が吹き荒れていた。
「だ、ダメです!やッ!やッ、やッ!・・・」
「ダメじゃなくて、イイんでしょう?ウフフフフ、ここもこんなにコリコリになっちゃって・・・」
「ああアッ!・・・」
今や乳房全体を上向きに吊り上げて見せるほど固く尖り、血の色に火照っている乳首が、その頂点に向けて指先で淫らに弄ばれる。と同時にクリスのもう一方の手は、静音の裸身の前面に沿ってソロソロとイヤらしく這い降り始めた。
縦長に形良く窪んだへそ、ふっくらと脂の乗った下腹部がヌルヌルと撫でつけられ、そして・・・・。
「いッ、イヤぁアアーッッ!」
魔女の指先が、淡く儚げな恥毛をかき分け、秘裂の内側へと泡をまぶすようになぞり込んできた瞬間、静音は魂消るような悲鳴を上げてその身を仰け反らせた。
「触らないで下さいッ!・・・そッ、そこだけは!・・・・」
「何言ってるのよ。ここが一番ベトベトに汚れてる部分じゃない。イヤらしい汁をよぉく洗い流さないとねェ・・・」
「お、お願いです!・・・あッ!許して下さいッ!・・・」
Vの字に開いた中指と人差し指が、やわやわと揉みほぐすように恥門をくつろげてゆく。内腿の筋肉が怯えたようにキュッと張りつめると、ヴァギナの肉厚な縁がみるみる反り返り、サーモンピンクの内臓がネットリと露にまみれてむき出しになった。
「ほォら、まだまだエッチな蜜が溢れ出てくるわ。・・・フフフ、生娘のくせに、なァんてイヤらしいの・・・」
「くくゥッ!・・・」
食いしばった歯の隙間から、追いつめられたような呻きが噴きこぼれる。
・・・身体の芯が、熱くただれそうに燃えていた。
何かいたたまれないような切なさが花奥からマグマのように沸き起こり、媚肉の溝という溝をこそぎなめるように駆け抜けてゆく。その度我知らずに身体が揺れ、艶めかしい喘ぎが恥ずかしくも口をついてしまうのだった。
ジュチュッ・・・ジュッ、ジュッ、ジュッ・・・・。
ふっくらとした肉の鞘は、今や内部の熱に堪えかねたかのようにパックリと口を開き、美しく形の揃った襞を柔らかく蠢かせて淫らな音色をたてている。全体のヒクヒクという震えに連れ、透き通った愛の汗が幾筋も放射状にあふれ出る様は、まるで丘に上げられた脆弱な水棲生物の器官が必死に酸素を取り込もうとする、空しく哀しげな動きのようにも見えた。
「むッ!・・・どうか、どうかもうやめて下さい!・・・お、おかしくなってしまいます!・・ああ、イヤぁッ!・・・・」
静音の哀訴は、次第にかすれた涙声になってゆく。理性でどんなに押さえつけようとしても、叩き付けるように襲ってくる情欲の波を鎮めようがなかった。
「フフフフ、遠慮をせずにおかしくなってしまえばいいのよ。どうせあなたは、もう一生ここから出られずに、そうやって悶え狂って暮らしていくしかないんだもの。そォら、今日何度目だか知らないけど、思うさま天の上まで昇ってきなさいッ!」
クリスの濡れた指先が、静音のやや大ぶりな肉の芽を包皮からヌルリと引きずり出すように摘み上げ、それを揉みつぶすように蠢いた瞬間、
「だ、ダメですッ!・・・あッ、あァああああああァーッ!・・・・」
この世が終わってしまうかのような絶叫と共に、静音の身体は大きく跳ね悶え、クリスの腕の中から飛び出して床に突っ伏した。
惨めに双脚を開ききったまま、ピクピクとオルガの余韻に引きつれる裸身からは、しかし急速に力が抜けてゆき、やがてグッタリと弛緩する。
「うッ・・・ううッ・・うッ、うッ、うッ・・・」
固く目を閉じ、次第に胎児のように身を丸めてゆきながら、静音は背を震わせ、絶望に満ちたすすり泣きの声を洩らし始めるのだった。
打ちのめされたその様子には、恵麻里と共にクリスに対して最後の抵抗を試みたときの、あの凛とした迫力は欠片も残っていない。
生来ひどく気弱で、異性とはまともに会話をしたこともない静音は、性に対する無知と嫌悪の度合いにおいて恵麻里以上に古風で頑なである。無論のこと自慰すら知らなかったそんな我が身が、薬物によってとはいえ、いとも容易く、しかも立て続けに淫らな悦びへと走らされてしまったのだ。
恥ずかしさと情けなさ、死にたいような屈辱感が、彼女から一切の勇気と気力を奪い去っていた。
「ウフフフフ、まァたベチョベチョに溢れさせちゃって。せっかく洗ってあげても少しも綺麗にならないわねェ。・・・どう、ゾニアンの威力は?自分の身体がいかに浅ましい代物か、これで思い知ったでしょう?」
ニヤニヤと静音を見下ろしながら、クリスが勝ち誇ったような口調で言った。
「生娘だおぼこだと気取っていたって、こうなってしまえば盛りの付いた犬猫以下。でもそれでいいのよ。恵麻里ちゃんにも言ったけど、ただ貞淑なだけでは『マーメイド』は勤まらないものね。さて・・・」
クリスは立ち上がり、バスルームの隅に造り付けてある物入れの前でしばらく何事かゴソゴソやっていたが、やがて両腕を大げさに開きながら振り返った。
「あ・・・・」
エクスタシーに全身が痺れたようになり、上体を持ち上げることも出来ずに横たわる静音は、再び近づいてくる魔女の姿にあえぐような声を上げた。
「どう、似合うかしら?これであなたを、いよいよ商品にふさわしい身体にしてあげるわね」
美しく磨き込まれたクリスの裸身には、光沢のある黒い革バンドがまるでパラシュートのハーネスのように巻き付けられていた。
いかにも淫らなそのSMルックの股間からは、恵麻里の急所に突き通したのと同じ、半透明の樹脂製バーがグロテスクにそそり立っている。いかに性について疎い静音とはいえ、それが何のためのアイテムであるのか、一目見て察知できないはずはなかった。
「い、イヤです・・・もう、許して・・・どうか・・・・」
弱々しくかぶりを振りながら、消え入りそうな掠れ声で哀訴する。
大きなグレーの瞳が強い怯えの色を湛えてユラユラと揺れ、必死にこらえていた涙が一息にドッと溢れ出した。
「そんなにビクつくことはないじゃない。仲良しの恵麻里ちゃんとお揃いの『大人』の身体にしてあげようというのよ。まさか自分一人だけ無傷なまま助かりたいなんて、虫の良いことを考えているわけじゃないでしょう?」
「そんな・・・でも・・・・」
オロオロと泣き顔を伏せる静音を、クリスは舌なめずりをしそうな表情で眺め降ろす。強いサディズムを性(さが)に持つ彼女にとって、静音の清楚で儚げなキャラクターは、その嗜虐趣味を満足させるのに格好の獲物であった。
「いい加減に観念して、私のお人形になりなさい。ほらッ!・・・」
「あッ、ダメですッ!・・・」
萎えきった身体が荒々しく抱き起こされる。
為すすべもなく、後ろ手にされた静音の豊かな裸身は、胡座に座ったクリスと向き合うような格好で、その両腿の上に抱え込まれてしまった。
「ああ、やめて!放して下さいッ!・・・」
「覚悟を決めるのね。ほら、見えるでしょう?私の立派な持ち物が。・・・フフフフ、私はあなたの、初めての『男』になるってワケよね・・・」
「やッ、助けて下さい!・・怖いッ!・・・」
しなやかに反った人工の男根を濡れそぼった恥丘にヌルヌルと押し当てられ、静音は悲愴な声を上げて身を揺する。
18年間、ひたすら清らかに守り抜いてきた女体の心臓部が、今まさに残酷に踏み荒らされようとしている!あろうことか、憎むべき犯罪組織の、しかも女性頭領に!・・・・
「・・・許して・・・それだけは・・・どうか、どうか・・・後生ですからァ・・・・」
ワナワナと震える口元から、まるで叱責された幼稚園児さながらの情けない泣き声があふれ出し、途中から堰を切ったような激しい嗚咽に変わってゆく。
(フフフ、本当にイジメ甲斐のある、可愛らしい娘・・・。買い手の決まっている恵麻里ちゃんはともかく、この娘は売り物にせず、私が直々に飼ってあげてもいいわねェ・・・・)
今や身も世もなく泣きじゃくりながら放免を乞う静音を、クリスは目を細めて見つめながら、
(ちょうど『備品』が無くなったところだし・・・。そうだわ、こないだアゲットが言っていた、新種のチップを移植してやるのも面白いわねェ。フフ・・まあとにかく今は、処刑の第一段階を済ませてしまいましょう・・・)
魔女の白い手が静音のヒップの下へ差し入れられ、それを心もち浮かせるようにしながら、自分の腰の上へグイと引き寄せた。
「ああイヤですッ!・・・助けてッ!恵麻里さァァーん!・・・・」
熱く濡れた身体の芯に、硬く、しかし柔軟な杭が無情に突き通されてゆく。哀れな生贄の断末魔の絶叫が、バスルームの中で、高く低く、いつまでも反響していた・・・・。
甘い声音と共に、湯の跳ね返る音が大きく響き渡る。
静音はクリスに後ろから抱きかかえられるようにして湯船に入れられていた。
そこは最前まで恵麻里達のいたオフィスルーム、つまり「サンクチュアリ」3F西端の部屋の東隣にあるバスルームで、壁や洗い場の床、浴槽まで全てが、淡いピンク色に塗られていた。
部屋は「サンクチュアリ」1Fにある屋内プールをそのままスケールダウンしたようなドーム状の造りで、かなりの広さと天井の高さがある。清潔に磨き込まれた浴槽も、4、5人が同時に入れるほどのゆったりした物だった。
本来はクリスのプライベートなバスルームなのだが、その広さゆえ、拐かしてきた少女たちの調教場としても頻繁に利用されている。新たな生贄として、静音もさっそくここへ引かれてきたのだった。
「本当にステキな身体と肌ね。恵麻里ちゃんの身体も素晴らしいけれど、あなたのはそれ以上。まさに『マーメイド』の素質十分だわ・・・」
「あッ・・・」
白い豊かな裸身を抱きすくめられ、うなじに唇を這わされて、静音は痛々しくもあえかな悲鳴を上げる。
革製の首輪、そして口元にはめられていた円柱状の轡は外されていたが、両手首を背中に束ね留められているのは変わらない。座った姿勢で後ろから抱え込まれていては、身体の自由はほぼ奪い尽くされているも同然だった。
今は当然クリスも全裸になり、輝くような裸身をあからさまにしている。その完璧な女体が艶めかしい弾力を伴って背中に押し当てられるたび、静音は倒錯的な官能美に焼かれて、その身を細かく震わせながら仰け反らせてしまうのだった。
(恥ずかしい!もうイヤ!・・・何故・・何故こんなことになってしまったの?・・・ああ、誰か助けに来て下さい!・・・・)
半日前には想像すらしなかった、惨めすぎる自らの境遇。今の今でさえ、これが現実の出来事とは信じられない。まさに悪夢だ。
考えてみれば、あの深雪という少女を「サンクチュアリ」の裏口に連れ出したのも、クリスにそう命じられたアゲット博士だったのだろう。最初から、静音を車からおびき出し、拉致する作戦だったのだ。
その失態のために、静音はパートナーをサポートするという、最も重要な使命を果たすことが出来なかった。結果、恵麻里は処女を奪われた上に肉体を惨たらしく改造され、犯罪組織のために屈辱的な協力を強いられている。そして自分もまた、いずれは・・・。
自らのミスが招いた悲惨すぎる運命に、静音の心中では、後悔と絶望の念が黒々と渦を巻いていた。
「そろそろ十分に暖まったかしら?じゃあ今度は、念入りに身体を洗ってあげましょうね。さ、上がりなさい」
「・・・も、もう許してください。手を解いてくだされば、身体は自分で洗えます・・・」
「まだそんな寝ぼけたことを言ってるの?獲物(ゲーム)に、自分の身体の世話を焼く自由なんかあるものですか。さあ早く!」
「あ・・・・」
背中を押し上げるように促されて、静音はやむを得ずに両足を踏ん張り、弱々しく立ち上がった。
クリスはすっかり元の柔和な態度に戻っていたが、それは二人の少女探偵を完全に屈服させた満足感による、一時的な「仮面」だ。その仮面の下に潜む、凶暴で邪(よこしま)な素顔を知ってしまった静音には、もはや魔女の指図に逆らうだけの勇気は残っていなかった。
・・・生きながら躯(むくろ)同然の存在に造り替えられてしまった、深雪という少女。壊れたゼンマイ人形然としたあの残酷な姿が、静音の心に凄まじい恐怖を植え付け、がんじがらめに就縛してしまっていたのだ。
恥ずかしさをこらえながらおずおずと脚を上げ、浴槽をまたぎ越す。溢れ出た湯ですべすべと輝いている洗い場に立った途端、
「ああ・・・・」
湯のぼせと共に、肉体的、精神的な疲労がドッと押し寄せ、静音はその朱唇から堪えかねたような喘ぎを洩らすと、クタクタと前屈みにひざまずいてしまった。
「あらあら、だらしのないこと・・・」
クリスが側に立ち、まさにハンターが仕留めた獲物の格を確かめるかのように、薄ら笑いを浮かべながら眺め降ろす。
今や息も絶え絶えの様子のその獲物は、クリスが端なくも言ったとおり、実に見事な肢体の充実を誇っていた。
恵麻里の女体も、その年齢からすればこの上なく美しく発達したものだが、静音のそれはある種の迫力すらも感じさせるようなグラマラスぶりだ。と言って、決して太っているという印象はない。下世話な言い方をすれば、出るべき所は十分以上に出ていて、締まるべき所は締まっているのだ。
その見事なプロポーションが、異国の血による白磁のような、しかも18歳の張り切った肌に包まれているのだから、クリスが思わず感じ入ったのも当然だった。
特に素晴らしいのは圧倒的なボリュームを誇るJカップの乳房で、上体を前に折った姿勢のため、まるで水を目一杯に詰めた巨大な風船のように、重々しく並んで垂れ下がっている。
「大分グロッキーなようだけど、お楽しみはまだまだこれからよ。さあ、しっかりなさいな」
「あうッ!・・・」
長く美しい髪を鷲掴みにされ、乱暴に仰かされる。ふくれあがった両の乳房がブルンと前に振り出され、ピシャリという哀しげな音と共に腹に打ち付けられた。
「もっと脚を大きく開いて。前も後ろも綺麗に洗ってあげるから」
「本当に、洗うのは自分で出来ます。だから手を・・・お願いです・・・・」
「同じことを何度も言わせないで。今のあなたには何一つ、自分で自由に出来ることなんてないのよ。私に任せて、お人形のように大人しくしていればいいの。ほらッ!・・・」
「あッ!・・・」
湯船の中の時と同様に、座った姿勢で後ろから抱え込まれ、両脚をかき開かれる。同時に大股に拡げたクリスの脚が、両側から静音の足首の内側へと割り込まされてきた。
まるでプロレスの固め技をかけられたように、女体の中心を惨めに開ききったポーズで、静音の裸身はガッチリと固定されてしまった。
「ひどいッ!・・・こんな!・・・・」
「今さら何を恥ずかしがることがあるの?あなたの身体は、さっきお尻の穴まで残らず私に見られちゃってるのに・・・」
わざと下卑た言い方をしてみせながら、クリスは右横の壁の一部に手のひらを押し当てた。その部分は浅く半円形に抉られていて、壁の内部には液体石鹸のタンクが仕込まれているのだ。
ジュッ・・・・。
蓄えられていた石鹸がクリスの手の圧力に反応して壁の表面からみるみる滲み出し、手のひらの上で瞬時に泡立った。
床や壁と同じ、美しいピンク色のその泡を、クリスは静音の裸身を撫で下ろすよう、丁寧に塗りつけてゆく・・・。
「あッ!イヤですッ!・・・」
上気した身体をギクッと竦ませ、静音は哀しげな悲鳴を上げた。
「どうしてイヤなの?汗と涙と、ばっちい汁でドロドロに汚れてるのを綺麗にしてあげてるだけじゃない。それとも、そんな不潔な身体のままでずーっといたいワケ?」
「そ、そんな・・・」
「不潔」という、獣を形容するような揶揄が静音の心をザクリと抉ってくる。
「洗うのだけは自分で・・・。お願いします。どうか、どうか・・・・」
涙にふくれた眼で背後を振り返り、すがりつくような哀訴を繰り返す。しかし見つめ返すクリスの青い瞳には、いささかの仮借の色も宿っていなかった。
「遠慮をせずに私に任せなさいって言ってるでしょう?さあ、そのすごいオッパイも綺麗にしてあげるわ」
「やッ、許して下さいッ!・・・」
キュッ、キュルッ、キュッ、キュッ・・・・。
クリスの両手が、クリームの入った軟質の容器を絞り上げるように、静音の胸元で淫靡な動きを繰り返す。
湯上がりで一面薄紅く染まり、縦長にピンと張り切った二房の重たい肉が、泡と共にヌルヌルと揉み込まれ、さらに痛々しく鬱血の度合いを強めていくたびに、静音は感電したかのように激しく裸身を反らせ、悲鳴を噴きこぼし続けるのだった。
「あうッ!・・・いけませんッ!・・うッ!・・ああッ!・・・」
「何だかんだとイヤがりながら、身体の方はビンビンに歓んでるじゃない。フフフ、そうよね、静音ちゃんの身体は、今やエッチのかたまりだもんねェ・・・・」
「そ、そんなこと・・・むうッ!・・・・」
必死に反駁しようとする声が、刺激に堪えかね、我知らずにほとばしらせてしまう呻きによって上手く続かない。
静音が身体を洗われることを頑なに拒んだのは、まさにクリスの言うとおり、自らの肉体がエクスタシーに完全に支配され尽くそうとしているからだった。
恵麻里が犯罪行為への協力を誓ったことによって、クリスは静音を廃人にしてしまうことだけは思い止まったものの、呵責の手を緩めたわけでは無論ない。このバスルームに入れられる前に、静音は泣きじゃくっての懇願も虚しく、その身体に一目盛り分の新たなゾニアンを打ち込まれていたのだ。
脳障害を起こす限界と言われる八目盛りには程遠いが、若い肉体を再び性の狂気に導くには十分すぎる処方量である。静音の未だ無垢な女体の奥では、それと裏腹に荒々しい官能の嵐が吹き荒れていた。
「だ、ダメです!やッ!やッ、やッ!・・・」
「ダメじゃなくて、イイんでしょう?ウフフフフ、ここもこんなにコリコリになっちゃって・・・」
「ああアッ!・・・」
今や乳房全体を上向きに吊り上げて見せるほど固く尖り、血の色に火照っている乳首が、その頂点に向けて指先で淫らに弄ばれる。と同時にクリスのもう一方の手は、静音の裸身の前面に沿ってソロソロとイヤらしく這い降り始めた。
縦長に形良く窪んだへそ、ふっくらと脂の乗った下腹部がヌルヌルと撫でつけられ、そして・・・・。
「いッ、イヤぁアアーッッ!」
魔女の指先が、淡く儚げな恥毛をかき分け、秘裂の内側へと泡をまぶすようになぞり込んできた瞬間、静音は魂消るような悲鳴を上げてその身を仰け反らせた。
「触らないで下さいッ!・・・そッ、そこだけは!・・・・」
「何言ってるのよ。ここが一番ベトベトに汚れてる部分じゃない。イヤらしい汁をよぉく洗い流さないとねェ・・・」
「お、お願いです!・・・あッ!許して下さいッ!・・・」
Vの字に開いた中指と人差し指が、やわやわと揉みほぐすように恥門をくつろげてゆく。内腿の筋肉が怯えたようにキュッと張りつめると、ヴァギナの肉厚な縁がみるみる反り返り、サーモンピンクの内臓がネットリと露にまみれてむき出しになった。
「ほォら、まだまだエッチな蜜が溢れ出てくるわ。・・・フフフ、生娘のくせに、なァんてイヤらしいの・・・」
「くくゥッ!・・・」
食いしばった歯の隙間から、追いつめられたような呻きが噴きこぼれる。
・・・身体の芯が、熱くただれそうに燃えていた。
何かいたたまれないような切なさが花奥からマグマのように沸き起こり、媚肉の溝という溝をこそぎなめるように駆け抜けてゆく。その度我知らずに身体が揺れ、艶めかしい喘ぎが恥ずかしくも口をついてしまうのだった。
ジュチュッ・・・ジュッ、ジュッ、ジュッ・・・・。
ふっくらとした肉の鞘は、今や内部の熱に堪えかねたかのようにパックリと口を開き、美しく形の揃った襞を柔らかく蠢かせて淫らな音色をたてている。全体のヒクヒクという震えに連れ、透き通った愛の汗が幾筋も放射状にあふれ出る様は、まるで丘に上げられた脆弱な水棲生物の器官が必死に酸素を取り込もうとする、空しく哀しげな動きのようにも見えた。
「むッ!・・・どうか、どうかもうやめて下さい!・・・お、おかしくなってしまいます!・・ああ、イヤぁッ!・・・・」
静音の哀訴は、次第にかすれた涙声になってゆく。理性でどんなに押さえつけようとしても、叩き付けるように襲ってくる情欲の波を鎮めようがなかった。
「フフフフ、遠慮をせずにおかしくなってしまえばいいのよ。どうせあなたは、もう一生ここから出られずに、そうやって悶え狂って暮らしていくしかないんだもの。そォら、今日何度目だか知らないけど、思うさま天の上まで昇ってきなさいッ!」
クリスの濡れた指先が、静音のやや大ぶりな肉の芽を包皮からヌルリと引きずり出すように摘み上げ、それを揉みつぶすように蠢いた瞬間、
「だ、ダメですッ!・・・あッ、あァああああああァーッ!・・・・」
この世が終わってしまうかのような絶叫と共に、静音の身体は大きく跳ね悶え、クリスの腕の中から飛び出して床に突っ伏した。
惨めに双脚を開ききったまま、ピクピクとオルガの余韻に引きつれる裸身からは、しかし急速に力が抜けてゆき、やがてグッタリと弛緩する。
「うッ・・・ううッ・・うッ、うッ、うッ・・・」
固く目を閉じ、次第に胎児のように身を丸めてゆきながら、静音は背を震わせ、絶望に満ちたすすり泣きの声を洩らし始めるのだった。
打ちのめされたその様子には、恵麻里と共にクリスに対して最後の抵抗を試みたときの、あの凛とした迫力は欠片も残っていない。
生来ひどく気弱で、異性とはまともに会話をしたこともない静音は、性に対する無知と嫌悪の度合いにおいて恵麻里以上に古風で頑なである。無論のこと自慰すら知らなかったそんな我が身が、薬物によってとはいえ、いとも容易く、しかも立て続けに淫らな悦びへと走らされてしまったのだ。
恥ずかしさと情けなさ、死にたいような屈辱感が、彼女から一切の勇気と気力を奪い去っていた。
「ウフフフフ、まァたベチョベチョに溢れさせちゃって。せっかく洗ってあげても少しも綺麗にならないわねェ。・・・どう、ゾニアンの威力は?自分の身体がいかに浅ましい代物か、これで思い知ったでしょう?」
ニヤニヤと静音を見下ろしながら、クリスが勝ち誇ったような口調で言った。
「生娘だおぼこだと気取っていたって、こうなってしまえば盛りの付いた犬猫以下。でもそれでいいのよ。恵麻里ちゃんにも言ったけど、ただ貞淑なだけでは『マーメイド』は勤まらないものね。さて・・・」
クリスは立ち上がり、バスルームの隅に造り付けてある物入れの前でしばらく何事かゴソゴソやっていたが、やがて両腕を大げさに開きながら振り返った。
「あ・・・・」
エクスタシーに全身が痺れたようになり、上体を持ち上げることも出来ずに横たわる静音は、再び近づいてくる魔女の姿にあえぐような声を上げた。
「どう、似合うかしら?これであなたを、いよいよ商品にふさわしい身体にしてあげるわね」
美しく磨き込まれたクリスの裸身には、光沢のある黒い革バンドがまるでパラシュートのハーネスのように巻き付けられていた。
いかにも淫らなそのSMルックの股間からは、恵麻里の急所に突き通したのと同じ、半透明の樹脂製バーがグロテスクにそそり立っている。いかに性について疎い静音とはいえ、それが何のためのアイテムであるのか、一目見て察知できないはずはなかった。
「い、イヤです・・・もう、許して・・・どうか・・・・」
弱々しくかぶりを振りながら、消え入りそうな掠れ声で哀訴する。
大きなグレーの瞳が強い怯えの色を湛えてユラユラと揺れ、必死にこらえていた涙が一息にドッと溢れ出した。
「そんなにビクつくことはないじゃない。仲良しの恵麻里ちゃんとお揃いの『大人』の身体にしてあげようというのよ。まさか自分一人だけ無傷なまま助かりたいなんて、虫の良いことを考えているわけじゃないでしょう?」
「そんな・・・でも・・・・」
オロオロと泣き顔を伏せる静音を、クリスは舌なめずりをしそうな表情で眺め降ろす。強いサディズムを性(さが)に持つ彼女にとって、静音の清楚で儚げなキャラクターは、その嗜虐趣味を満足させるのに格好の獲物であった。
「いい加減に観念して、私のお人形になりなさい。ほらッ!・・・」
「あッ、ダメですッ!・・・」
萎えきった身体が荒々しく抱き起こされる。
為すすべもなく、後ろ手にされた静音の豊かな裸身は、胡座に座ったクリスと向き合うような格好で、その両腿の上に抱え込まれてしまった。
「ああ、やめて!放して下さいッ!・・・」
「覚悟を決めるのね。ほら、見えるでしょう?私の立派な持ち物が。・・・フフフフ、私はあなたの、初めての『男』になるってワケよね・・・」
「やッ、助けて下さい!・・怖いッ!・・・」
しなやかに反った人工の男根を濡れそぼった恥丘にヌルヌルと押し当てられ、静音は悲愴な声を上げて身を揺する。
18年間、ひたすら清らかに守り抜いてきた女体の心臓部が、今まさに残酷に踏み荒らされようとしている!あろうことか、憎むべき犯罪組織の、しかも女性頭領に!・・・・
「・・・許して・・・それだけは・・・どうか、どうか・・・後生ですからァ・・・・」
ワナワナと震える口元から、まるで叱責された幼稚園児さながらの情けない泣き声があふれ出し、途中から堰を切ったような激しい嗚咽に変わってゆく。
(フフフ、本当にイジメ甲斐のある、可愛らしい娘・・・。買い手の決まっている恵麻里ちゃんはともかく、この娘は売り物にせず、私が直々に飼ってあげてもいいわねェ・・・・)
今や身も世もなく泣きじゃくりながら放免を乞う静音を、クリスは目を細めて見つめながら、
(ちょうど『備品』が無くなったところだし・・・。そうだわ、こないだアゲットが言っていた、新種のチップを移植してやるのも面白いわねェ。フフ・・まあとにかく今は、処刑の第一段階を済ませてしまいましょう・・・)
魔女の白い手が静音のヒップの下へ差し入れられ、それを心もち浮かせるようにしながら、自分の腰の上へグイと引き寄せた。
「ああイヤですッ!・・・助けてッ!恵麻里さァァーん!・・・・」
熱く濡れた身体の芯に、硬く、しかし柔軟な杭が無情に突き通されてゆく。哀れな生贄の断末魔の絶叫が、バスルームの中で、高く低く、いつまでも反響していた・・・・。